『木村伊兵衛写真賞』森栄喜氏から喜びの声。エロメン一徹氏からもお祝い
intimacy』(ナナロク社)。
森氏は「エロメン」一徹さんのフォトブック『いってちゅ。Ittetsu photo book』(扶桑社)も撮っている気鋭のカメラマン。彼に受賞について聞いてみた。
「今回の対象作となった写真集『intimacy』は恋人や友人たちと過ごした1年間の記録で、特別じゃない“日常”を淡々と撮りためたものでした。大がかりなライティングはせず、フラッシュは焚くことはあっても、基本的には自然光や室内の照明だけで撮影しています。作為的なポージングはしていません。
僕たちは毎日小さな幸せを発見しながら過ごしていて、そこに大きな事件や出来事はありません。でも、何気ない日常を切り取り、まとめて写真集にすることにメッセージをこめています。
いわゆるゲイ、同性愛者に対して異質でアブノーマルな印象を持つ人もいます。けれど僕たちは何処にでもいる男女のカップルと同じように過ごしていて、そういった日常を自然に、さりげなくプレゼンテーションすることで、これまでのイメージを更新したかったんです。
前作『tokyo boy alone』(レボリューション・スター・パブリッシング)を撮影する過程で、僕自身が自分を肯定できるようになり、『intimacy』では写真の中に自分を被写体として出せるようになった。”一対一のパートナーシップ”とがっつり向き合えたことが収穫です。
そして今、取り組んでいるのは”家族”がテーマの作品。自分と社会との関わりも表現したいのですが、”同性婚”を盛り上げたいという意図もあります」
◆「被写体」となった一徹氏が見た森栄喜氏とは?
森氏が撮影したフォトブック『いってちゅ。』(扶桑社)でモデルとなったAV男優・一徹氏。撮られる立場からみて、森氏の撮影はどんな雰囲気だったのだろうか。
「撮影初日は、AV男優として”動く自分”は撮られ慣れていたけど、慣れないスチール撮影で緊張しまくってて……。森さんはそんな自分に対してプレッシャーを課してくるのではなく、決して重荷にならないアプローチをしてくれました。そのおかげでリラックスして臨めるようになりましたね。初めてお会いした時も気さくに話しかけてくれて、緊張をほぐしてくれたのを覚えています。『いってちゅ。』が、”セクシーなのに、そこはかとなく明るさが漂う”素敵な写真満載のフォトブックになったのは森さんのお陰です。このたびは、本当に受賞おめでとうございます!」
一方、森氏は一徹氏との撮影を振り返りつつ、自身のスタイルについて次のようにも語っている。
「僕は指示が少ないタイプの写真家なんです。被写体を、敢えてほおっておく。指示をするとそれらしく見せたりできるのですが、できあがった写真には”指示をした”というのが漏れ出ていて。やっぱり自然に生まれた表情には敵わないんです。
一徹さんも、僕のそんなスタイルに最初は戸惑ったかもしれません。でも、撮影の最終日には、あうんの呼吸ができていました。ファインダー越しに見つめ合うと”わかる”心地よさがあって。僕のことを信頼してくれているんだな、と嬉しく感じました」(森氏)
●森栄喜(もり・えいき)
1976年、金沢市生まれ。米パーソンズ美術大学写真学科卒。写真集に『tokyo boy alone』など。フォトジン『OSSU』も発表している。写真集『intimacy』(ナナロク社)は第39回木村伊兵衛写真賞受賞作。
オフィシャルHP http://www.eikimori.com/
受賞作品展は4月17日~4月24日に東京・新宿のコニカミノルタプラザにて。
http://www.konicaminolta.jp/plaza/
●一徹(いってつ)
1979年生まれ。大学卒業後、公認会計士試験の勉強中に見つけたエキストラ男優募集をきっかけにAV業界へ。2009年、「an an」SEX特集号のDVD(SILK LABO監修)に出演。これをきっかけに一般女性にブレークし、大人気男優へ。2012年、SILK LABO専属AV男優となる。フォトブック『いってちゅ。Ittetsu photo book』(扶桑社)が好評発売中。
<取材・文/日刊SPA!取材班>
2月5日、写真界の芥川賞とも称されている『第39回木村伊兵衛賞写真賞』が発表され、1976年石川県金沢市生まれの森栄喜氏が受賞した。対象作は写真集『
『intimacy』 「何気ない日常を切り取る この絶対の孤独と、この狂気はなんだ……」山本耀司(ファッションデザイナー) |
『【特典DVD付】いってちゅ。 Ittetsu photo book』 撮影風景メイキング、セクシーボイス朗読が盛り込まれたDVD付き |
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ