更新日:2011年06月03日 00:11
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東電株はそろそろ買い!?

 福島原発事故以降、燃料棒とともに株価もメルトダウンしてしまった東京電力。額面価格(500円)を割り込み、300円割れの状況にある……。が、賠償スキームは固まったし、政府は「上場は維持する」と明言している。原発事故の収束は見えないものの、企業存続の道筋は見えつつあるのだ。ならば、株価が反発してきてもよさそう。ぶっちゃけ、そろそろ買い時なのでは?

震災前から約80%安の水準で推移する東電株。500円の額面価格を大きく割り込んでいる

「そんなのどこの証券会社でも『買うのはおよしなさい』としか言いませんよ!」(中堅証券会社)  いきなり一喝されてしまったが、それもそのはず。賠償スキームを巡る政府の対応がどうもちぐはぐなのだ。 「枝野官房長官は銀行の債権放棄が東電支援策の条件になるという趣旨の発言をしています。ということは順序からいって、先に株主責任が問われるのが筋。上場を維持すると言ってはいますが、100%減資で東電株が紙クズになる可能性があるんです。さらに、民主党内には一時国有化や配電分離を訴える勢力もくすぶるなど、政権の足並みが揃っていない。とても先行きを楽観視できるような状況ではありません」(同)  ただし、枝野氏の主張に懐疑的な見方をする人も少なくない。国内株を主体に運用する某ヘッジファンドのシニアトレーダーが話す。 「債権放棄なんて、GM再建時のオバマ大統領の手法を真似た大衆迎合的なアピールにすぎないでしょう。債権放棄させたら、銀行が『追加融資はできません』となるのは容易に想像できますから。5兆円もの東電債はデフォルト(債務不履行)と見なされて社債市場は大混乱し、すべての処理費用を税金で賄うほかなくなってしまいますよ」  この見方をマーケットは織り込んでいる、と分析するのはラジオ日経の名物記者、和島英樹氏だ。 「500円額面とはいえ1円まで行ける東電株が300円前後を維持しているのは、何らかの毀損はあったとしても生き残るということが前提になって株価が形成されていると理解できます。JALの再建と比較される方もいますが、東電が他社と圧倒的に異なるのは必ず一定のキャッシュが入ってくること。関東圏の方が関西電力から電気を買うことなんてできないわけです。事業継続が用意ならば、世論の批判をかわしながらマーケットを混乱させない範囲で企業の存続を図っていくのが現実的ではないでしょうか」  現時点では上場が維持される可能性が高いということ。「東電株が紙クズになれば機関投資家による株主代表訴訟のリスクもある。官僚は天下りのポストを残しておきたいし、財界の反発も根強いのでJALのようにはならない」(某ファンドマネジャー)なんて見方もあるのだ。

連日、記者会見が開かれる東電本社には取材陣が出入り。周囲は物々しい警備に包まれている

 となると、にわかに株価の反発期待も高まってくる。和島氏も「仮に減資なしで上場が維持されれば、額面(500円)前後で取引されても不思議ではない」と話すのだ。賠償関連法案の成立が見えてくるタイミングでの反発が予想できそう。  ただし、さらなる値下がりを予想するレポートも登場していることには注意したい。先物やオプションなどのデリバティブ取引で世界最大手の米MFグローバル系調リサーチ会社が5月25日付けで「東電株の目標株価を158円」とする英文レポートを作成したのだ。現在の株価の半値水準! 原発関連費用の拡大とともに大量の新株発行による株式の希薄化が起こり、一株当たりの資産価値は2014年まで下がり続けると予想。2013年3月期までは毎年1兆円以上の最終赤字を計上すると記してもいる。    半減するリスクを背負うならば、東電株を買ってみるのもアリ……かもしれない。 取材・文/池垣完
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