K-POPアイドルが世界進出するホントの理由【後編】
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「韓国には国家ブランド委員会という大統領直属の機関があります。国家ブランド指数というものがあり、かつて韓国はこの順位が50カ国中33位と芳しくなかったのです。これに対し李明博大統領が、『韓国は世界13位の経済規模で、1人あたりの国民所得は約2万ドルに達するが、世界的なブランド指数は33位に過ぎない。これは大きな問題である』とし、国全体のイメージアップを目指したのです」
韓国の国家ブランドが向上することによって、観光収益が見込めたり韓国企業が世界市場で戦いやすくなるなどのメリットはもちろんあるが、ここではメンツの問題が大きかったと思われる。国土が狭く資源の少ない韓国では、芸能コンテンツを強力な輸出産業と位置づけることは自然な流れだった。そこに可能性を見いだした政府が、文化体育観光部を通じてドラマやK-POPをサポートしているのだ。
「今年7月に文化体育観光部の鄭炳国(チョン・ビョングク)長官が発表した『大衆文化産業のグローバル競争力強化案』では、現地公演の支援活動やグローバルファンドの設定など、支援事業の推進が明らかになりました。また、‘09年にダンスやK-POPなどエンタメ産業に特化した政府指定の公立高校・翰林演芸芸術高等学校が設立されのも記憶に新しいところです。同校は演芸科、ミュージカル科、実用舞踊科、実用音楽科、映像制作科、ファッションモデル科の6学科に分かれており、芸術家ではなく、あくまでもタレントを養成する教育方針になっています。入試では世界史のテストのようにヒップホップの歴史が出題されるというのですから、世界に通用するポップスターを育てようとする政府の本気度が窺えますね」
国策としてのK-POP。政府関係者のみならず、国民、そして当のアイドル本人もその意識は強い。
「韓国には“国威宣揚”という言葉があります。有名人はどこに行っても『国の士気を高めるために私は一生懸命やります!』といった挨拶をするし、またそれをよしとする国民がいます。だからKARAや少女時代が日本のオリコンチャート1位になったというニュースも、国のためになっているという考えなのです。韓国という国のブランド力が上がっているので、いろんなかたちの支援をするのは当たり前だと捉えています。それはゴルフやフィギュアスケートなどスポーツの世界でも同様です」
文化商品(コンテンツ産業に対する韓国政府の呼称)の輸出で得たいものは“カネ”と“メンツ”。韓流ビジネスが世界進出に躍起になる理由の一端が見えてきたように思える。
取材・文/スギナミ
【参考図書】
『韓流エンタメ日本侵攻戦略』
小野田 衛・著 扶桑社新書 本体720円+税
日本の若者たちはなぜK-POPに熱狂するのか?日本人が知らない韓流ビジネスの正体、韓国芸能界の裏側を徹底した現地取材をもとに考察
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