超大穴のSPA!記者が奇跡の優勝!! ポーカー全国大会挑戦レポート【後編】
世界最大規模のポーカー大会であるWSOP。03年のメイントーナメントでは、参加費40ドルのオンライン予選から勝ち上がったクリス・マネーメーカーという若手プレイヤーがそのまま優勝賞金250万ドルを獲得。それを皮切りに、アメリカでは一大ポーカーブームが到来。そしてその余波は世界各地に飛び火し、現在、世界中のカジノで高額賞金の獲得を夢見るプレイヤーたちが頭脳勝負に興じている。
もちろんそれは日本も例外ではない。12年に日本人で初めてWSOPタイトルを獲得した木原直哉氏の活躍は記憶に新しいところだが、世界各地のポーカー大会で、日本人のタイトルホルダーが続々と誕生している。カジノのない日本では、強豪プレイヤーたちの多くが、オンライン、そして“アミューズメント”といわれるカジノを模したお店で腕を磨いているのだ。昨年春の記事「海外トーナメント腕試し前哨戦。メイドカジノ店でポーカー対決!」で紹介した「アキバギルド」をはじめ、アミューズメント店は全国各地に存在する。そして、そんな各地のポーカースポットで予選を勝ち抜いた150人近くのプレイヤーが集結するポーカーの全国大会「JAPAN OPEN POKER TOUR2014 Season1:Tokyo tour」が東京・銀座で開催。SPA!記者も参加することになった。
⇒【前編】「大会1日目」はコチラ
大会2日目。開始時点でのブラインドは500/1000。ポーカーというゲームは持っているチップ数によって、ガラリとプレイの戦略の幅が決まってくる。仮にこの時点で1万5000点程度しか無ければ、小出しにチップを費やして増やす、という戦略が功を奏するのは難しく、生きるか死ぬかの選択を常に強いられる。
逆に、記者ほどのチップ量があればプレイにも幅が出てくるのだが、それを支えるのは、メンタルの部分によるところも大きい。ポーカーを覚えた当初は、運よくチップを稼いだあと、「なんとか長く生き延びたい」という気持ちが先行して、攻めるべき局面でも自らブレーキを踏み、保守的なプレイを選択。結果、ゆっくりとチップを減らし続けて敗退ということがよくあった。
そんな経験から、「優勝を目指して日和らないプレイをすること」を自らに課した。チップを減らしてしまうのは怖いことだが、投資効率&期待値の高い局面で、積極的に参加することを意識する。
ポーカーにおける投資効率とは、たとえば2500点のレイズが入って、自分はブラインドですでに1000点を払っている。自分が持っているのは79o(oとはダイヤ、スペードなどのスーツが揃っていないオフスーツの略。反対に2枚のマークが揃っていることをスーテッドといい、79sと表記する)のような弱い手だが、場には5000点出ていて、1500点を投資して場に出ている5000点を取りにいくと考える。これをポーカー用語で「1:3のオッズがある」といい、細かい計算は省略するが勝率が25%以上あれば期待値的にプラスとなる。79oの場合、相手が強いAKsのような手に対しても34%の勝率があるので「オッズが合う」となるわけだ。もちろんある程度のチップ数があってこそできるプレイだが、2日目開始早々、この手の「最初の2枚では負けているけど、フロップ以降で逆転」というケースがハマってチップを増やし続け、開始5時間後には20万点近くのチップ数となっていた。
トーナメントによって違いはあるが、残り人数が9人になるとプレイヤー全員が1つのテーブルにまとめられてファイナルテーブルが始まる。残った9人でチップを奪い合い、最後まで残った人間が優勝となるのだ。
ファイナルテーブルが始まった時点での経過時間は2日目開始から数えておよそ8時間。この頃から慣れない長時間のプレイと緊張感の高い雰囲気に疲労が出始め、明らかなミスプレイを連発し始める。ファイナルテーブル開始時には59万点あったチップも、一時は20万点にまで落ち込むなど増減が激しく、結局、運に助けられながら残り4人、自分は60万点を持っていて現状2位。
ブラインド6000/12000/アンティ2000
自分に配られたのはQTという4人対決ではそれなりに強い手。3万点にレイズすると、僅差のトップ目のプレイヤーがコールしてきた。
フロップ(場に出ているチップ数は7万4000点)
44T
自分はTがヒットしてボードの4ペアと組み合わせるとツーペアが完成。先にアクションする相手がチェック(ベッドしないで相手にアクションを回すこと)してきたので4万点をベッド。すると、相手は12万点にレイズしてきた。
相手は何を持っているのか? 現時点で自分が負けている手は、
(1) JJより上のペア
(2) AT、KTなどのドミネイトされているハンド(自分の手は44TTQ、相手が44TTAだとすると、QとAの差で負けていることになる)
(3) 4を持っていてスリーカードが完成
の3パターン。1であれば、最初にレイズを入れてくると思われるので読みから外す。3も、これまでの相手のプレイスタイルから45といった手でコールするとは考えられないし、あるとすればA4sのような手。しかし、確率は低い。一番ありそうで恐ろしいのはAT、KTのような手だが、同程度の確率でTJ、T9といった手も含まれる。ただ、相手の立場になって考えると、このようなボードでは自分(記者)も絡んでいないと思うのではないか。ならば、自分の次のアクションをどう読むか?
記者「オールイン(自分の持ちチップ全額をベッドすること)」
相手が長考に沈んだのを見て、現時点で勝っていることを確信し始める。心の中で「コールしてくれ、コールしてくれ」とポーカーフェイスで念じていると、相手はコールして99を開く。相手が勝つには残り2枚のコミュニティカードで9を出す必要がある。その確率はざっと8%。結果、9は表れず、記者がダブルアップ。120万点という大量得点だ。相手に話を聞いたところ、「AJのような2枚のオーバーカードでブラフ(嘘)をしてきたと思った」という。今回のようにドライなボード(手が絡みづらそうなフロップ)で手がヒットすると、思わぬ激突になることがある。思い返してみれば、本大会では、そうした局面で手が当たることが多く、運が良かったことは間違いない。
残り3人の時点で圧倒的なチップ差を手にした記者は、そのまま流れに乗って優勝することができた。前述のとおり、4月にソウルで開催される世界大会の参加権を獲得。まだ参加人数が確定していないので詳しい賞金は不明だが、優勝賞金2000万円近くの規模となることが予想される。格上の相手ばかりで記者が勝つチャンスはほぼゼロに近いが、その模様は追ってお伝えしようと思う。
大会全体を振り返ると、各プレイヤーの真剣さ、緊張感は、海外のポーカートーナメントと比べても遜色がない。どちらかといえばエンジョイプレイヤーに属する記者も、ピリピリした雰囲気に、心地よい興奮を味わうことができた。
また、大会運営の試みとして面白いと感じたのは、RFIDという特殊なチップを使ってカードを読み取る“ハンド公開テーブル”の存在。プレイヤーたちの見えないところで、全員のハンドが公開され、ニコニコ生放送で解説されるのだ。
ポーカーというゲームは基本的に相手の手が見えない状態での戦いが続く。自分のお粗末なプレイを解説されるのは恥ずかしいものだが、「相手はあのときのアクションで何を持っていたのか? 自分の判断は正しかったのか?」を振り返ることができるのはかなり貴重だ。
記者は幸いなことに、2日目の大半をハンド公開テーブルでプレイしていたため、300ハンド近いプレイ履歴を確認することができる。オンラインや仲間うちでのポーカーでは決して味わうことの体験ができる本大会。「JAPAN OPEN POKER TOUR」のホームページ上で今後の開催スケジュールは更新されるので、これからポーカーを覚えようという人も、腕に自信のあるプレイヤーも、腕試しの場として参加することを強くオススメしたい。
<取材・文/スギナミ 写真協力/JAPAN OPEN POKER TOUR>
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