ポーカー世界大会「APPTソウル2014」に挑戦!そこは強豪プレイヤーが巣食う“鬼の棲家”だった【後編】
前回の記事「ポーカー全国大会挑戦レポート」で奇跡の優勝を果たし、ソウルで開かれる世界大会の参加権を獲得した本誌記者。前日夜に現地入りをして「APPT(Asia Pacific Poker Tour) Seoul Main Event」に参加することとなった。
⇒【前編】はコチラhttps://nikkan-spa.jp/623611
相手がめくったのはAQ。現状、負けている。逆転するには、残り2枚でツーペア完成のTかストレート完成の9が落ちる必要がある。その確率はざっと28%。苦しい……。
結果、ターン、リバーに望みのカードは落ちず、あえなく敗退してしまった。失ったチップを買い足すことのできないトーナメントポーカーでは、一瞬のミスが致命傷になる。結果的には惨敗だったわけだが、「自分の読みに従って、ときには生き死にを賭けた決断をする」こともポーカーの醍醐味であることは間違いない。事実、ラストハンドでオールインしてから相手がコールするまでの数分間は、最高にエキサイティングな瞬間だった。
256人中、DAY2に進出したのは92名。うち進出した日本人プレイヤーは17人だ。ここから入賞ラインの28名が決まるまで熾烈なサバイバルゲームが展開される。本大会の賞金プールがどのように推移しているのかを見てみよう。
1位 1億8500万ウォン
2位 1億1650万ウォン
3位 6511万ウォン
4位 4969万ウォン
5位 4112万ウォン
6位 3255万ウォン
7位 2570万ウォン
8位 2056万ウォン
9位 1543万3200ウォン
10~12位 1028万ウォン
13~16位 857万ウォン
17~20位 686万ウォン
21~24位 548万5000ウォン
25~28位 480万ウォン
ギリギリ入賞を果たせば300万ウォンの参加費が480万ウォンに増える。しかし、10人に1人しか入賞できないというゲームの性質上、この賞金額はかなり少ないといえる。これは賞金の大半が“上位入賞”に偏っているために起きる問題。インザマネーは大きな目標ではあるが、強いプレイヤーほど上位入賞を目指して、“リスクを恐れるよりもチップを稼ぐ”ことを常に意識する。
さて、前述した日本人プレイヤーのうち、DAY2進出を果たしたNaoya Kiharaは、開始早々チップを増やし続け、チップ量を倍増させたが、77(自分)対AK(相手)のコインフリップ(勝率50%の勝負)に負けて大きく減らし、敗退してしまう。
「ポーカートーナメントは運に恵まれないと生き残れないのは当たり前です。ただ、運に恵まれたときにそこそこの順位で終わるか、優勝を狙える位置に近付けるかは、スキルが左右します」
そう語ってくれたKiharaは、続くハイローラーイベント(メインイベントとは別枠で開催。参加費は60万円とメインよりも高く、強いプレイヤー&金持ちしか参加しない)で2位に入賞。約500万円の賞金を獲得したのだからさすがの実力である。
また、DAY1終了時点で14万7000点ものチップを稼ぎ全体の3位につけていたMasato Yokosawaは、30万点近くまでチップを増やし「2つ目のタイトルか?」と期待されるが、入賞直前、たった一つのプレイで2万点近くにまでチップを減らしてしまう。
フロップ Q45
参加プレイヤーは3人で、そこでオールイン対決となる。Yokosawaが開いたのはスリーカード完成の44。ひとりはAQでほぼ勝ちという状況だが、もうひとりが開いたのは55。これはポーカー用語で「セットオーバーセット」と呼ばれ、自分がセット(フロップで持ちペアがスリーカード)を持っていた場合に1%以下の確率で起きる、最悪に厳しいシチュエーション。自分のスリーカードをフォーカードに発展させるしか逆転の目がないからだ。
「ザッツ・ポーカーですね。あそこで降りたらポーカーじゃないし、優勝を目指していた自分のプレイに後悔はありません。自分が逆の立場でチップを大きく稼ぐシーンだってあるわけですから」
そう爽やかに答えてくれたYokosawaの次の活躍に期待したい。
残り24人になったところでDAY2が終わり、DAY3は優勝者が決まるまで続けられる。この時点で残った日本人プレイヤーは8人。皆、国内のポーカースポットはもちろん、海外トーナメントにも積極的に参加している猛者ばかり。DAY3開始から7時間ほど経って残り9人。ついにファイナルテーブルのメンツが決定した。
●ファイナルテーブル進出者(番号はシートナンバー)
1 Akashi Kosaku(JAPAN) 209,000
2 Winfred Yu(HONG KONG) 512,000
3 Yoshimichi Makoto(JAPAN) 371,000
4 Christian Haggart(CANADA) 779,000
5 Umano Shinya(JAPAN) 389,000
6 Sugimoto Keiichiro(JAPAN) 396,000
7 Samanrha Cohen(USA) 1,294,000
8 John Marshall(USA) 739,000
9 Chan Kampanatsanyakor(Thailand) 323,000
海外ポーカートーナメントのメインイベントのファイナルテーブルは、ポーカーを始めた人間なら誰もが憧れる夢の舞台。そして、その場所に日本人プレイヤーが4人も残るというのは快挙だ。これだけのチップ量を武器に戦えるという楽しさもさることながら、「自分以外の誰かが飛ぶたびに、賞金が50万、100万円単位で増えていく」のだ。
ファイナルテーブルの戦いは、深夜3時まで続いた。優勝したのはタイのChan Kampanatsanyakor。日本人最高位は4位に入賞、4969万ウォン(約500万円)を獲得したUmano Shinyaさん。終了後のインタビューで開口一番「いや、楽しかったです」と答えていたのが印象的だった。
参加費と滞在日程さえ捻出できれば、大会に参加したときから優勝のチャンスはプレイヤー全員に等しく与えられている。専業プレイヤー以外には、会社経営者やフリーランスなど“スケジュールとお金を調整しやすい”お仕事の人が多いのは日本のポーカープレイヤーの特徴の一つだ。「金持ちの娯楽だろ」とするのは簡単だが、これだけ“熱い”体験をできることはなかなかない。記者のような貧乏暇無し人間が、仕事を切り詰めてでも参加したくなる魅力が、海外のポーカートーナメントには確かにあるのだ。
<取材・文/スギナミ 写真・取材協力/ポーカー速報>
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