世界的ラリーで占う 来年の投資先はどこがよいか?(3)
では、なぜ、国際的に名前を有名にする必要がないその両社がスポンサーなのか。SWRの組織委員会の役員にきいた。
「普通のスポンサーと違って、両社は国際的な露出には興味がないようだ。それに、そもそも国際的なブランドというわけでもない。私もなぜ、ルクオイルらがスポンサーをやっているか理解できない。ロシア側の主催者に聞くと、国内事情(domestic transaction)だといわれた」
別の関係者は、もっと端的に言っている。「プーチンが、ルクオイルとトランスネフチに『お前がスポンサーをやれ』と言ったからだ」と。
SWRの出発点は、モスクワの中心地「赤の広場」。ロシアで最も有名な場所からのスタートだ。ロシアの国務大臣も出席して、国ぐるみの力のいれようだ。
さらにSWRのパンフレットの表紙をめくると、最初に出てくるのが、なんとプーチンの大きな写真とコメントなのだ。ソチ五輪は2014年。ソチ五輪はロシアの「次期」大統領の下で行われる。プーチンは自分が大統領に復帰する前提で行動をしているように見えた。
これが、私が「プーチンで決まり!」と思った理由の一つだ。
実は、SWR取材に先立ち、筆者が名誉相談役をしている駐日ドミニカ共和国大使館の紹介で、駐露ドミニカ共和国大使館を訪問した。註ロシア・ドミニカ共和国大使館は、3年前に駐在員事務所から大使館に昇進したばかりで、今の大使は1代目大使。大使館昇進を実現した「やり手」大使だ。
もちろん、ドミニカは豊かな国ではないので、大使館もモスクワ中心地の大きな建物というわけにはいかない。東京の大使館と同じような感じだ。東京の駐日大使館は、西麻布にある通称「大使館ビル」に、他のラテンアメリカ・カトリック系の国の約20の大使館といっしょに入居している。モスクワでも同じで、中心部から車で30分ほど行った居住エリアの古いマンションの一室に大使館はあった。そのマンションには、ドミニカ以外にも、コスタリカや、北朝鮮の大使館もあった。
大使館そばの、一人1500円くらいのイタリアンレストランでランチをご馳走になりながら、駐露大使に話を聞いた。来年の大統領選挙について質問すると、愚問とばかり、鼻で笑いながら、「プーチンの返り咲きで決まりだ。メドベージェフが大統領を続けることはない」と断言していた。
「それはあなたの個人的な意見か? 外交筋の予想はどうだ」と聞くと、「もちろん私個人の意見でもあるが、ここの駐露大使館の外交筋では共通認識ではないか」とのことだった。日本や欧米のマスコミでは、プーチン引退説まで流されていたから、疑いなく「プーチン」という駐露大使の態度に最初に驚いたが、SWRを取材して確信に変わった。
⇒世界的ラリーで占う 来年の投資先はどこがよいか?(4) に続く
【筆者プロフィール】
石井至(いしい いたる) 1965年北海道生まれ。東大医学部卒。米・スイス・フランスの外資系銀行でデリバティブ商品開発に従事。28歳でマネージング・ディレクター就任は日本人最年少記録。32歳に引退後、独立。現在は石井兄弟社代表取締役社長。金融コンサルタンティングを軸に、金融・教育分野で事業展開し、運営する小学校受験塾「アンテナ・プレスクール」は名門校への高合格率を誇る。
この特集の前回記事
ハッシュタグ