結成27年のTHE RYDERS キープ・オン・パンク ロック!の秘訣は「脳に贅肉をつけない」
結成から27年、日本のパンクロックシーンをけん引してきたTHE RYDERS。いまもって、アツくいられるワケとは? その秘訣を訊いてみた。
――大ベテランの2人に今さら聞くのも失礼な話かもしれませんが、THE RYDERSがどういうバンドなのか、改めて説明していただけますか。
J.OHNO:そうだな……。70年代中期から始まった初期パンクに影響を受けたバンドということになるかと思う。サウンド的には、ギミックなし、シンプルなコード弾きで攻めまくる感じかな。要するに“ファスト&ラウド”の直球勝負!
KOJI:そこは昔から変わらないね。俺たち、10代の多感な時期にパンクの洗礼を受けた世代だからさ。ちょうど高校に入ったくらいのタイミングで。
J.OHNO:正確にいうと、それ以前も当然バンドやっていたんだけどね。パンクが出てくる以前は、キャロルだったり。一般の感覚的には、テレビに映っているショーケン(萩原健一)や松田優作に憧れてた。ただ、それでもパンクの衝撃は決定的だったね。
KOJI:2人とも、初期パンク大好きだったからさ。“もうこれでいくしかないだろ!”っていう感じだったよ。で、20代中盤に、このバンド始めた。
J.OHNO:ただ、その頃はすでにハードコア(パンク)の波も来ていたんだよね。要するにパンクの流れも少し変わってきていて、初期パンクの他にもジャンルに広がりが出始めていてさ。だから俺たちも初期パンクを基本にしつつ、そういうハードコアの影響も少なからず受けていたと思う。
KOJI:そうだね。基本はあくまでもファスト&ラウド。そしてストレート。カッコいいと思うものが、昔から2人とも似通っているんだな。それは本質的な感覚の問題で。だから言葉で説明する必要も、あまりないんだよ。
――活動歴が非常に長いですよね。活動休止が2度ありますが、結成から数えると……。
KOJI:去年、メジャーデビュー25周年だったんだ。インディーズ時代があるし、活動期間でいうと27年になるね。その間、Jと俺の2人に関してはずっと一緒。まぁ途中で2度、活動休止期間もあったんだけどさ。
――30年近くですか! 単純な疑問として、なぜこんなに長く続けられているのですか? バンドを続けると大変なことも多いでしょうし、よっぽどの信念がないと無理な気がします。
J.OHNO:結果論……なのかな。正直、続けるための努力をしてきたとか、そういうカッコいい話でもないんだよ(笑)。まぁバブル時代だし、バイトに困らなかったり、時代の恩恵授かっててのもあるかも。あと基本的には、体力があるかどうか?だね。音楽やるにも体力なければ出来ないよ。鍛えあげる体力じゃなく、元々備わってる体力みたいなもの。どこでも寝れるくらいの図太さとかさ。
たとえば、バンドでツアーやレコーディングとか入ると、バイトを辞めなくちゃいけないことも出てきたりするわけで、俺もクビにされたことは多々あるよ。
精神的にも、グダグダ気にしてられないって、図太さ! それでも何かしら仕事はあった時代に助けられたってこと。飲み屋とかで飲んでると、現場仕事のスカウトを受けることもあったし(笑)。
KOJI:確かにバイトには困らなかったよな。
J.OHNO:なんで続けられたのかって冷静に考えてみると、俺たちは時代の落とし子だっていうことかな。俺らの上の世代、つまり1950年代生まれの人達っていうのは、もっと気合が入っていたんだよね。車にもバイクにも熱中するし。劇団員の人たちが、赤ちょうちんで日本酒を飲みながら激論を交わすようなイメージ。だけど俺たちは、太平洋戦争が終わって日本が団地化されていく中で育った世代だからさ。モロに団地っ子。
まあ俺のまわりの狭い範囲での話だけど、燃えることを知らない初めての世代という言い方もできると思う。三無主義というか、新人類の走りみたいな世代だよ。だから恵まれてきたっていうか、苦労を知らないんだよ。それでバブルを味わってバイトにも困らなかったから、好きなバンドを続けられたという面もあるだろうね。
――でもそのバイトにしたって、うっかり職場での立場が偉くなったりすると、バンド活動にも支障をきたしますよね。
J.OHNO:確かにね。そういえば以前テレビでGLAYのギターの人が言っていたんだけど、昔、警備のバイトをやっていて、仕事上偉くなりそうになったんだって。それでバンドを続けるかバイト続けるかっていう話になったんだけど、その本人いわく“そこでバンドを選んだから今の僕がある”って言ってたのを覚えてる。やっている音楽のジャンルは違うけど、同じことだよね。バンドをやっている以上、必ずそういう節目は来るから。20代も後半にもなると、職場で責任ある立場、店だったら店長格とかになることもあるしさ。
KOJI:社会的な責任を持たされていくってね。パンクとはいっても、みんな仕事はそれぞれ持っているわけでさ。音楽で……ましてやパンクで食える奴なんて一握りだし。
J.OHNO:だから、そうなってくると考え方も変わるんだよ。社会の中で一生懸命働いていると、お金ももらえるし、みんなからの信頼も得られる。
しかしパンクロックをやっている以上、社会の側面みたいな生き様をしているわけじゃん。だけど人生に選択肢が出てくると、やっぱり考えることもあるんだ。まぁその一方で、ずっと工事現場の仕事を続けていくのも、反骨でパンクっぽい心意気だとは思ってた。
KOJI:お客さんにも、気質みたいなものがあってね。パンクを好きな層は、やっぱり実際に過酷な場所とかで働いている人も多いわけ。飲んだら負けねぇし、ケンカしても負けねぇみたいな気質。うん……それは確実にあるな。
J.OHNO:特にKOJIは九州育ちだからね。呑んだら気性は激しいよ(笑)。
KOJI:今は飲み比べとかしないって(笑)。昔はよくやったけどさ……。
――それとバンドを続ける上での障壁のひとつとして、家庭の問題も出てきますよね。子供ができたから辞めるように奥さんから説得されたりとか……。
KOJI:あぁ、そのパターンか。そういうのが好きだから一緒になったくせに、後から急に“もっと稼げる仕事はないの?”とか言ってきたりとかさ(笑)。
J.OHNO:そりゃ俺たちも男だから普通に恋愛もするし、失敗もするし、結婚して離婚とか。それ以上に、もう世代的には親を介護しなくちゃいけない立場になったりと。脳梗塞で倒れたとか、痴呆が始まったとか、そういう話がリアルに出る中で、いつまで“ジャカジャーン♪”とかやっているんだよっていう話にもなってくるわな(笑)。
――では、なぜ、それにもかかわらず続けようと思うのですか?
J.OHNO:……やっぱり好きなんだよ。さっきも言ったように、時代の落とし子というのもひとつ。これ(バンド)しかできないし、他に潰しも利かないしね。
KOJI:そう! これを説明するのは難しいんだけど、結局は好きだからっていうことに行き着くと思う。よそのバンドのケースもいろいろ聞くけどさ。そりゃ事情はそれぞれあるとは思う。仕事のことだったり、家庭のことだったり……。ただ、それとは別のところで音楽は続けてもいいと思うんだよ。
※【vol.2】に続く⇒https://nikkan-spa.jp/678163
【THE RYDERS】
日本のPUNK BAND。ファストでストレートが持ち味。1987年にVo,OHNO Bass,KOJIを中心に結成。同年「GET GOOD LOVIN’」をキャプテンレコードよりリリースし、インディーズデビュー。翌1988年にVAPより「THE RYDERS」にてメジャーデビュー。当時では、タトゥーを入れたシンガー、ニューヨーク・パンクを彷彿させるサウンドやヴィジュアルは珍しく話題となった。デビュー当時から硬派でアウトローなイメージを持つ。自らを「雑草」と呼び、歌詞にも反骨精神や社会に対してのシニカルさを取り入れた数多くのワーキングクラス賛歌を取り込み、幅広い層から支持を得ている。 ストレートで激しいファストパンクにもポップセンスがあり、展開のある様々なリズムを取り入れた楽曲が特徴である。ライブは、バンドとファンとのポジティブでワイルドな一体感のあるステージが特徴。アメリカ、韓国のツアーやCDリリース等など、海外での経歴も持ち合わせる。25周年を越えてなお勢力的な活動を続けるPUNK BANDである。ライブスケジュールなど詳細は、公式HP(http://www.the-ryders.com/)をチェック。また、THE RYDERSが出演するパンクフェスイベント「PUNK BAR H.O.D 10th Anniversary Party」では、あのラフィンノーズやロリータ18号なども参戦する。この機会に生でTHE RYDERSを堪能すべし!!
★TOKYO FIGHT RECORDS オンライン ストア http://tokyofight.cart.fc2.com/
●アルバム『ONE FOR ALL』(2013年)
●PHOTO DVD DATA & MOVIE 2DVD『ATTITUDE ’08-’10』(2011年)
●DVD『EASY COME EASY GO Document1992&20xx』(2013年)
<取材・文/小野田 衛 撮影/難波雄史(本誌) 撮影協力/PUNK BAR H.O.D bar plastic model>
『ONE FOR ALL』 痛快なポップセンスが光る衝動のパンク・ロックを体感しろ!! |
『ATTITUDE '08-'10』 26曲70分超えのスライド&ライブDVDと2000枚以上のPHOTOデータ |
『Easy Come, Easy Go! ~Document 1992 & 20XX~』 THE RYDERSの歴史の一部を垣間見れる待望の映像作品 |
この特集の次回記事
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