結成27年のTHE RYDERS キープ・オン・パンク ロック!の秘訣は「脳に贅肉をつけない」vol.2
結成から27年、日本のパンクロックシーンをけん引してきたTHE RYDERS。いまもって、アツくいられるワケとは? その秘訣を訊いてみた。
⇒【vol.1】はコチラ
――おそらく最初は、表現したいことがあるからバンドを始めたと思うんです。活動を長く続けるうちに、「もう言いたいことがなくなった」という状態になることはないんですか?
KOJI:いやいや、“もっといろんな奴に聴いてもらいたい”っていう気持ちはずっとあるよ。昔の曲だけじゃなくて、今やっていることもそうだし、これからやろうとしていることもそう。自分の中では、全然、現状に満足していない。
J.OHNO:映画のパーティーシーンとかで、箱バンって出てくるじゃん。その場にいるみんなを喜ばせるようなタイプのバンド。あの手のバンドで個人の意見なんか主張したら、場が白けちゃうよね。だから“イエ~イ! ご機嫌か~い?”“今夜も踊ろうぜ!”くらいの楽しい内容でいいわけでしょ。それに比べると、パンクっていうのは自分の主張をぶつけていい音楽なわけ。たまに後輩バンドから“歌詞に書くことがなくて困ってて、、、”とか語られることもあるんだけどさ。こっちからすると“お前ら、言いたいこともないの?”って驚いちゃうよ。
あと、異性を酔わせて励ましてみたいな、甘いムードみたいなさ、そんな歌詞は世の中に蔓延してるっぽいから、そういうの好きな奴ら同士に任せてさ、俺は社会の違う側面も含め、反映できればと思うよ。
――この記事を読んでいる人は、バンド経験などない普通の会社員も多いと思います。でも最近は、同じ会社に27年も勤め続けるケースだって珍しい気がするんですよ。
J.OHNO:でもさ、パンクバンドをやっている奴の中には、普段は本当に真っ当なサラリーマンとして働いているケースも多いんだ。きちんとネクタイを締める週末ロッカーとして。だってタトゥー入れてても隠せるし。あとバンドを辞めた連中が何をしているかっていうと、意外と魚釣りにハマることが多いわけ。まぁ魚釣りに限らず、バイクでも車でもいいんだけどさ。人それぞれ何かしら趣味があるわけで、それがバンドから何かに変わるだけっていう気もするけどね。もっとも俺たちの場合、バンド意外に趣味なんてないけど(笑)。最近は農業やる人もいる。“これ、うちの畑で採れた野菜です。食べてください”とか、ライブハウスまで持ってきてくれたり。さまざまで楽しいよ。
KOJI:まぁ面白い時代になったとは思うよ。そういう意味じゃ、こっちも刺激を受けるというかね。
J.OHNO:でも、27年続けられた理由ねぇ……。音楽に対する情熱は、すごくあったと思う。それは間違いなく消えたことがなかった。ただ、さっきから言っているように俺たちは三無主義の世代だから、努力している姿を見せたくないっていうのも確実にあるね。
――そういう美学はあるわけですね。
J.OHNO:ある!俺らは見ればわかるように、いかにも美味いもの食ってなさそうな貧相な感じ(笑)。自分らは、ステージに立った姿がすべてなんでね。そこで察してほしいですよ。甘いものを食って、家族の幸せを得て、中年太りして……そういう姿っていうのは観ている人にも伝わってしまうしね。
――LAUGHIN’ NOSEのCHARMYさんしかり、THE STAR CLUBの HIKAGEさんしかり、往年のパンクロッカーの方は体型が崩れないですよね。ジムとか通っているんですか?
J.OHNO:ジム!? 冗談じゃない! ジムなんて通うくらいなら、ロック辞めるよ! 要するにね、脳に贅肉を与えないようにするんだよ。
――脳に贅肉を与えない?
J.OHNO:脳に贅肉を与えるというのはね、人間っていうのはいろんな欲望があるわけじゃない。それは食べ物しかり、遊びしかり。だけど、それをあえて遮断するの。じゃないとストイックになれないから。自分を“飢えている状態”に持っていく。
――意味がわからないです……。お腹がすいたらラーメン食べたくなるし、暑かったらクーラー入れたくなりますよね。なんで、あえて自分にとっていいことを避けるんですか?
J.OHNO:ラーメン好きだけどね(笑)。まあ自分の欲望のままに行動してどうなってしまうのか?って。そうなったら体型とか顔つきが変わるだけじゃなくて、心まで変わっちゃうと思うんだよね。だから、そこは徹底して制限して、ハングリーでいかないと。たとえば安易に“飲みにいこうぜ”って電話があったり、以前も高校時代の友達から旅行とかに誘われたけど、そういうのは一切行かない!全部断るくらいの。
――はぁ……。信じられないです……。
KOJI:ボーカリストは、意外とこういうタイプ多いのよ。ストイックなタイプが。そうすると歌詞を書くときも、空想の世界じゃなくてリアルに近づくしね。じゃなかったら信憑性ないじゃん。信念を持っている奴だけが、表現に説得力を持つことができるんだよね。なかなかここまで自分を追い詰めることができる奴はいないけどさ。
J.OHNO:脳に贅肉を与えないという自論は、昔からずっと言っているね。だけど、ここぞという時になれば、必要だと思うものは食べるよ、そこはすごく値段が高くてもね。やってしまう!いってしまう!(笑) だけど、なんでもかんでも他人から勧められたものに流されてしまうっていう……。でなく、要は必要に応じたことだけする、自分や他人の欲に流されないようにする。
――同じことを継続するコツみたいなものがあれば、教えてください。
KOJI:そうだな……。まぁカッコいいことは言えないけど、好きなことや興味があることは、いくつになってもとことんまでやってみればいいと思うよ。そうしたら、やりたいことも広がっていくだろうし、仲間も増えるだろうしね。人生を通じて、やりたいことを続けていけばいいと思うんだ。言っちゃえばそれは趣味ってことになるのかもだけど、別に音楽じゃなくてもいいんだからさ。まぁそれがギャンブルとかだったら、ちょっと問題あるのかもだけどね(笑)。でも俺ら、ギャンブルなんて必要ないんだもん。やりたい音楽があるから、ギャンブルをしたいとも思わないよ。
J.OHNO:人生がギャンブルみたいとか(笑)。
KOJI:あと当たり前の話だけど、“真面目にやる”っていうことも継続する上では大事だろうね。会場入りの時間を守るとか、そういう当たり前のことをきちんとやらないバンドはダメだよ、やっぱり。最終的には消えていく。
――あっ、そこはパンクの世界も同じなんですか。
J.OHNO:そりゃ、そうだよ~。“本番に間に合わなかったです”なんてバンド、ありえないでしょ。どの世界も同じだって。
KOJI:サウンドも同じだよ。パンクなんて誰でもできるって思われているかもだけど、やっぱりそこは音楽だからさ。ちゃんと練習しないとできない。“なんでもいいじゃん!”って感じでギターをギャーンってかき鳴らしたところで、チューニングも合ってなかったら観ているほうは醒めちゃうよ。
J.OHNO:そうだよな。俺たちだって、少なくとも音楽家の端くれではいたいよ。音楽をわかっている奴も唸らせるような、採譜できないグルーヴ感とかね。じゃないと本当に、ただの楽器をいじっている野良集団になっちゃうから(笑)。
KOJI:パンクとはいっても、残っている人たちはみんな上手いよ。じゃないと、聴くに耐えないしね。
⇒【vol.3】に続く
【THE RYDERS】
日本のPUNK BAND。ファストでストレートが持ち味。1987年にVo,OHNO Bass,KOJIを中心に結成。同年「GET GOOD LOVIN’」をキャプテンレコードよりリリースし、インディーズデビュー。翌1988年にVAPより「THE RYDERS」にてメジャーデビュー。当時では、タトゥーを入れたシンガー、ニューヨーク・パンクを彷彿させるサウンドやヴィジュアルは珍しく話題となった。デビュー当時から硬派でアウトローなイメージを持つ。自らを「雑草」と呼び、歌詞にも反骨精神や社会に対してのシニカルさを取り入れた数多くのワーキングクラス賛歌を取り込み、幅広い層から支持を得ている。 ストレートで激しいファストパンクにもポップセンスがあり、展開のある様々なリズムを取り入れた楽曲が特徴である。ライブは、バンドとファンとのポジティブでワイルドな一体感のあるステージが特徴。アメリカ、韓国のツアーやCDリリース等など、海外での経歴も持ち合わせる。25周年を越えてなお勢力的な活動を続けるPUNK BANDである。ライブスケジュールなど詳細は、公式HP(http://www.the-ryders.com/)をチェック。また、THE RYDERSが出演するパンクフェスイベント「PUNK BAR H.O.D 10th Anniversary Party」では、あのラフィンノーズやロリータ18号なども参戦する。この機会に生でTHE RYDERSを堪能すべし!!
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●アルバム『ONE FOR ALL』(2013年)
●PHOTO DVD DATA & MOVIE 2DVD『ATTITUDE ’08-’10』(2011年)
●DVD『EASY COME EASY GO Document1992&20xx』(2013年)
<取材・文/小野田 衛 撮影/難波雄史(本誌) 撮影協力/PUNK BAR H.O.D bar plastic model>
『ONE FOR ALL』 痛快なポップセンスが光る衝動のパンク・ロックを体感しろ!! |
『ATTITUDE '08-'10』 26曲70分超えのスライド&ライブDVDと2000枚以上のPHOTOデータ |
『Easy Come, Easy Go! ~Document 1992 & 20XX~』 THE RYDERSの歴史の一部を垣間見れる待望の映像作品 |
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