元韓国海軍少佐が分析「金正恩の病状悪化と北朝鮮クーデター疑惑」
北朝鮮の金正恩第1書記が約40日ぶりに公の舞台に姿を現した!? 10月14日、北朝鮮の朝鮮中央通信(KCNA)が、金第1書記が新たな集合住宅を視察したことを報じ、14日付の北朝鮮労働党の機関紙『労働新聞』も写真付きで視察の様子を紹介した。その動静が明らかになったのは9月3日に夫人同伴でコンサートを鑑賞して以来のことだ。
9月25日には北朝鮮の国会に当たる最高人民会議が開かれたが姿を現さず、10月10日には朝鮮労働党創建69周年記念行事が催されたが、そんな一大イベントも欠席。KCNAは、金日成主席、金正日総書記の遺体が安置されている錦繡山太陽宮殿に「金第1書記が花かごを供えた」ことしか報じなかったのだ。
これだけ長い期間、姿をくらましたことがなかったため、金第1書記に関してはさまざまな憶測が広がっていた。今年7月以降の北朝鮮メディアが足を引きずりながら歩く様子を報じ、「ご不便なお体」と言及したこともあって、重病説がまことしやかにささやかれた。このほかにも死亡説、暗殺説、クーデター説まで浮上していただけに、今回の”公開視察“はそんな噂を吹き飛ばす目的があったと思われる。だが、北朝鮮ウォッチャーの間ではいまだ疑念がぬぐえていないという。元韓国海軍少佐で拓殖大学国際開発研究所の高永●(●は吉を2つ並べた字/コウユンチュル)氏が話す。
「労働新聞では杖を突きながら視察している写真が掲載されましたが、いつの視察だったかは明らかにされていません。前日の活動を報道する慣例があるので、10月13日の視察だった可能性もありますが、KCNAのほうは映像を流さず、視察報告のみだったことを考えると、もっと以前の映像だったことも十分考えられます。そもそも、北朝鮮では9月27日から戒厳令が敷かれ、首都・平壌は封鎖されて出入り禁止の異常事態にあります。北朝鮮から核や兵器の技術供与を受けているイランの報道機関は『金正恩の血液はドロドロで脳梗塞の一歩手前』と報じていましたが、少なくともかなり健康上に問題をきたしていて、内部が混乱している可能性は高い」
10月4日には北朝鮮ナンバー2の黄炳瑞(ファンビョンソ)軍総政治局長に、崔竜海(チェリョンヘ)国家体育指導委員会委員長、金養建(キムヤンゴン)朝鮮労働党統一戦線部長らが、韓国・仁川で開かれていたアジア大会閉会式に“電撃出席”して話題を呼んだが、これも北朝鮮の異常事態を想起させる材料となったという。
「軍総政治局長というのは日本で言うところの防衛大臣で、軍部の中で最も力のあるポスト。党統一戦線部長の金養建は情報部のトップで、崔竜海は今でこそ国家体育指導委員会委員長ですが、以前は軍総政治局長ですから、突然、韓国を訪問した彼らは軒並み軍部で強い力を持った人たちなんです。そんな人たちが一緒に韓国を訪問することも前代未聞なら、特使でもなく、親書も持たずに訪問するのも不可解。そこから考えられるのは、もはや2つのパターンしかありません。1つは金正恩の病状悪化により北朝鮮国内が混乱することを防ぐために、電撃訪韓で世界に『健康状態は問題ない』とアピールしたパターン。もう1つは、国内でクーデターが起こっているパターンです。朝鮮労働党の急進派と軍部が手を組んで金正恩を軟禁状態しており、そうした混乱状況にあることを自国民にひた隠すために、軍部のトップらが電撃訪韓して国民の目をそらした可能性がある。少なくともガバナンスがまったく機能していないことは確か。南北高官級会談を申し入れておきながら、国境付近での緊張は高まっている。まず、このままでは日本の拉致問題の進展も望めないでしょう」
いつ、金第1書記の動静を明らかにする動画が放送されるか? それによって、北朝鮮の現状が明らかになりそうだ。 <取材・文/池垣完(本誌)>
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