FFの生みの親が語る「コンシューマーゲームとスマホゲームを開発するうえでの違い」

スマホゲーム市場が大きな盛り上がりを見せる中、家庭用ゲームでヒット作や話題作を手掛けたクリエイターたちが、続々と新たなスマホゲームを生み出している。彼らは、どのような理由でスマホゲームを手掛けるのか。3人の鬼才たちのインタビュー完全版をお届けする。

◆FFの生みの親が手掛けたスマホの本格RPG

坂口博信氏

坂口博信氏

『ファイナルファンタジー』シリーズの生みの親として知られる、坂口博信氏が手掛けたスマホ向けRPG『テラバトル』が、異例のヒットを記録している。配信から口コミなどで人気が広まり、DL数が徐々に伸びていくことが多いアプリ市場において、『テラバトル』はわずか20日間で100万DLを突破。2014年11月21日現在、120万DLに届きそうだ。この反響を「予想外でした」と語る坂口氏に、『テラバトル』の開発経緯を訊いた。

――コンシューマーゲームではなく、スマホ向けのゲームを開発した経緯を教えてください。

坂口:チーム状況が一番の理由です。『ラストストーリー』というゲームを開発した後、スクウェア(現スクウェア・エニックス)でいっしょだった西村有紀(ゲームデザイン)や大野浩司(プログラマー)と再会しました。大野は、『テラバトル』をサーバー側も含めて1人で全部やってしまったという天才肌なんですが、この3人の最小限のチーム構成で“ものづくり”をしたくなりまして。そのターゲットとしては、スマホ市場が最適だと考えたんです。

――スマホゲームはあまり開発されていないと思いますが、コンシューマーゲームとスマホゲームを開発するうえでの違い、スマホゲームならではのよかったところ、たいへんだったところなどがありましたらお答えください。

坂口:スマホゲームのよいところは、少人数でも開発できることです。コミュニケーションが密になり、さまざまな要素に熱く深く話しあったり、喧嘩しあったものが盛り込めますから(苦笑)。それに各自の力量が如実に現れるので、やはり今回のメンバーの相性と力のバランスがよかったということだと思います。

――『テラバトル』が短期間で100万ダウンロードを達成した、率直な感想を教えてください。

坂口:正直驚きましたね。『テラバトル』はコンシューマー的な要素が強く、コアゲーマー向けな分、ライトユーザーには受けが悪いのでは、もしくは取っ付きがよくないのではと思っていました。10万ダウンロードになんとか到達しつつ、そこからの声でじわじわと広がってくれたらいいな、という考えでリリースに至りましたから。

――ですが、結果的には配信から1か月も経たないうちに、100万ダウンロードを達成しました。『テラバトル』のどの点が、ユーザーの方に受け入れられていると分析されていますか?

坂口:結果的には、コンシューマー的な、敵のAIを打破して倒すというようなことに代表される、歯ごたえがよかったのかなと感じています。それに、藤坂公彦(キャラクターデザイン)の低クラスであっても妥協しない絵や、葉山賢英(グラフィックデザイン)のシンプルなUIデザイン、植松伸夫さんの音楽などが加わり、さらにコンシューマー色を強めたのかなと思いますね。

――課金をしなくとも十分にプレイできるところも人気なのかなと思いますが、無課金でも遊べるように意識されているのでしょうか。また、課金しなくとも遊べるようにした狙いがありましたら教えてください。

坂口:無課金でも遊べる、というよりは、戦闘を作りこんだ結果、なるべく多くのキャラクターがそろいつつ、それらを選別して最適なチーム構成で戦ったほうがおもしろいゲームになったため、その醍醐味を味わってもらえるような施策をしているというのが現状ですね。やはり、力をいれて仕込んだおもしろさを感じてもらえないのが一番ツライですから。

 また、その結果、無課金でも十分にプレイできる状態になりましたが、元ミストウォーカーの田中謙介がプロデューサーを務める『艦これ』のように、“おふせ”という形での課金がありえるということも聞いていまして。少しそんなことも期待しつつ、なんとか運営が保てればと考えました。

――施策と言えば、『テラバトル』はダウンロードスターター(DL数に応じて、有名なクリエイターが参加したり、コンテンツが追加される)という魅力的な施策を行っています。ダウンロードスターターが生まれたきっかけは?

坂口:キックスターターをプロモーションとして活用できないかという話がでたのがきっかけです。キックスターターで開発資金を集めるということに少し抵抗があったのと、スマホ特有の“お祭り感”を拡張するための企画にしたかったので、今のダウンロードスターターという形になりました。

テラバトル

テラバトル

――ダウンロードスターターに対する周囲やユーザーの反応はいかがでしょうか。

坂口:DL数が伸びていくことを楽しみにしてくれるユーザーがいるのはうれしいです。そういった“熱”のようなものが、リリース後もさまざまな形で育っていくスタイルのスマホゲームにとっては、非常に重要だと思っています。また、基本的にはスクウェア時代の自分の横の繋がりでできあがっていますから、いい意味で自分の過去の作品の影を感じ取ってくれていると思いますね。

――今後、『テラバトル』で挑戦したいこと、行ってみたい施策を教えてください。

坂口:今までのスマホゲームにはない形でのコラボレーションや、イベントダンジョン、もしくはゲームの新機能搭載などにチャレンジしたいですね。オンラインモードの搭載や、松野泰己氏の新シナリオなどが重要で、そこから『テラバトル』の独特な拡張の仕方を浮かび上がらせたいと思っています。

――坂口さまにとって、スマホゲームはどのような存在でしょうか。『テラバトル』の開発前と開発後で認識がかわったことなどありましたら教えてください。

坂口:ファミコン時代の開発への“熱”をもう一度もたらしてくれた存在です。 少人数チームでいい喧嘩を繰り返しつつさらにおもしろくしていきたいですし、それを支える勢いを与えてくれるのが、現在のスマホゲーム市場だと感じています。

【坂口博信氏】
「ミストウォーカーコーポレーション」CEO。『テラバトル』はプロデュースを担当。代表作は『FF』や『ブルードラゴン』など多数

【テラバトル】
挟み将棋のように敵を挟んで攻撃するRPG。植松伸夫氏の音楽や藤坂公彦氏のキャラクターも魅力。詳細は、http://www.terra-battle.com/jp/

取材・文/黒田知道
(C)MISTWALKER

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