雑学

丁寧に焙煎したコーヒーは胃もたれしない――昭和喫茶「どんぐり」店主の決意

自家焙煎珈琲店どんぐり

天井からつるされたイサム・ノグチの和照明が店内の雰囲気を盛り上げる

 赤い屋根のどんぐり型ログハウスの店内に入ると、吹き抜け天井の空間が広がっていた。窓から日差しが降り注ぎ、まったりとした時間が流れていた。

「珈琲を飲むときくらいは、天井の高い開放感のある場所で、ゆったりくつろいでほしいんです」

「自家焙煎珈琲店どんぐり」の店主・竹花弘美さんは、カウンター内で作業しながら想いを語ってくれた。埼玉県北部・久喜市郊外の県道沿いで純喫茶をはじめたのは、昭和55(1980)年のこと。竹花さんのこだわりは、店をログハウスにすることだけだった。

⇒【写真】はコチラ http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=791318

「お客さんにコーヒーを出していたが、自分は飲みませんでした。飲むと胸焼けするので(苦笑)。アルコールや、カレーなどはやりのメニューも取り入れて朝から晩まで働いて繁盛していたけど、流行を追うだけでいいのかと将来に不安を感じていました」

自家焙煎珈琲店どんぐり

店舗前にある2畳ほどの焙煎室で、店が休みの時以外ほぼ毎日、朝5時から2時間ほど生豆を焙煎。極上のお米を炊きあげるように「ムリ・ムラ・ムダ」のない作業が続く

 開店から7年たった昭和62(1987)年ごろ転機がやってきた。珈琲専門誌で見かけた東京都内の自家焙煎珈琲の名店を訪れたときのことだ。

「キューバ豆のストレートを飲み、知らないうちにおかわりを頼んでいました。珈琲は体質にあわないものだとずっと思っていた。厳選した生豆を丁寧に焙煎して入れた珈琲は身体にやさしく胃にもたれないことを初めて知りました」

 目からウロコの体験をした竹花さんは、早速行動に出た。焙煎技術の講習を受けて焙煎機を購入、店名を「コーヒーロッジ どんぐり」から「自家焙煎珈琲屋 どんぐり」に改称。身体にやさしい一杯の珈琲づくりに情熱を傾け、活路を見出すことにした。

「焙煎機は半熱風式の3kg釜ですが、600~700gの少量の豆を焙煎してスタッフで試飲、1日10回試す日もありました。どんなときも安定した味を出せるようになったのは、7~8年前ぐらいでしょうか」

自家焙煎珈琲店どんぐり

笠間焼のカップに注がれた深煎り「ペルーウアヤバンバ」。一番人気の中深煎り「どんぐりブレンド」は、上質のコロンビア豆、コスタリカ豆、グァテマラ豆を惜しまず使い、さっぱりまろやか

 自身の体験から、珈琲の苦手な人にも好みの一杯と出会ってほしいと願う。ホット全34種、珈琲メニューの多さもこの店の特徴だ。コロンビア豆は浅煎り、中深煎り、深煎りの3種、焙煎の違いによる微妙な味の違いを楽しめる。すべての豆でアイスコーヒーを味わうこともできる。

 有機栽培の豆を積極的に仕入れ、割高のフェアトレード豆も意識的に購入。自家焙煎仲間と共同購入している最高品質のイエメンモカ、軽い苦みがくせになるフェアトレード豆「ペルー ウアヤバンバ」などだ。生豆段階と焙煎後に欠陥豆を丹念に取り除き、煎りムラがないようにしっかりと焙煎、雑味のなさがうまみを引き出す。竹花さんは、70歳の大台を前に決意をあらたにしている。

「胃にやさしく、砂糖もミルクも入れずに飲める、のどごしのいい珈琲をこれからもつくり続けたい。どんぐりのように一粒一粒、真心を込めて」

自家焙煎珈琲店どんぐり

自家焙煎を始めて珈琲豆の生産地との関わりが増えたという竹花さん。店内のBGMを南米の民族音楽フォルクローレに変え、アンデスの産地に想いをはせる

 2/3発売の週刊SPA!「偏愛図鑑 昭和喫茶店」では、昭和の時代から続く喫茶店の魅力を探る。名曲喫茶、豆にこだわる店、建物そのものが文化財の店など、個性豊かな昭和喫茶店の数々を紹介している。

【自家焙煎珈琲店どんぐり】
埼玉県久喜市青葉4-1-20 JR久喜駅バス10分  駐車場あり
電話:0480-23-1418 10時~19時 月・火休(祝日は営業)店内禁煙
http://homepage3.nifty.com/donguri-coffee/

取材・文・撮影/田中裕司(フォトプレス)http://photopress.jp/index.html

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