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マグロの漁獲量が激減 背景に「巻き網漁」

水産庁は昨年12月、クロマグロの危機的状況を物語るショッキングな結果を発表した。それによると、クロマグロの資源量がここ数年で激減しているのだという。ワシントン条約の規制対象になるともいわれ、マグロが食べられなくなる日も近い!?

◆なんと前年比80%減!! 過去最低の漁獲量の理由とは?

マグロ

産卵期のクロマグロを巻き網で一網打尽にしている鳥取県境港。漁獲量激減の主原因とみられているが、野放し状態が続く

「水産総合研究センター」の調査によると、太平洋クロマグロの産卵場は、南西諸島(沖縄県)周辺と日本海に限られているが、南西諸島周辺で生まれたクロマグロの漁獲量を解析した結果、’14年生まれのクロマグロ資源量は前年比で20%(80%減)、一昨年と比べても33%(67%減)に激減していることが判明した。

 一方の日本海でも一昨年の23%(77%減)に漁獲量が落ち込み、「データを総合すると、過去最低を記録した’12年を下回るのは確実」(同センター)という。

 このままでは、絶滅危惧種の国際取引を制限する「ワシントン条約締約国際会議」(’16年に開催予定)で輸出入の規制対象種に加えられる可能性が高い。そうなれば、クロマグロが食べられなくなる日が訪れても不思議ではない。

 なぜこんな事態に陥ってしまったのか。その大きな要因は、将来のマグロ資源を支える産卵魚を根こそぎ取る「巻き網」だとの見方が有力だ。水産資源問題に詳しい勝川俊雄・三重大学准教授はこう話す。

「’04年から巻き網船は最新鋭の魚群探知機を使って、夏場に産卵で海面近くに上がってくるマグロの魚群を待ち構え、一網打尽にする漁法を日本海で始めました。その結果、それまであまり獲られることがなかった産卵期のマグロが大量に獲られることになり、資源量が激減してしまいました」

マグロ 巻き網漁は1000m以上の網を広げ、その中の魚を種類や大きさにかかわらず一網打尽にする乱獲漁法。とはいえ、産卵期のマグロは市場価値が低く、巻き網船にとっては「夏場の小遣い稼ぎ」にすぎない。

「それなのに、将来のマグロ資源を食いつぶすこの『巻き網漁』に、厳しい規制はかからなかったのです」(勝川氏)

 産卵期のマグロ漁獲の開始は、巻き網漁の拠点である境港(鳥取県)の水揚げ量増加をもたらした。それまで年間500t程度だったが’04年に1700tに急増、その後5年間は2000t前後で推移した。しかし翌年から1000t以下に激減。資源枯渇の兆候がすぐに出始めたのだ。

同じ頃から、長崎県壱岐島をはじめ一本釣りが盛んな地域でもマグロが獲れなくなった。「壱岐市マグロ資源を考える会」(中村稔会長)の資料によると、壱岐島(長崎県)最大の勝本漁港での水揚げ量は、’05年度の358tから’13年度は5分の1以下の67tに激減した。

 元漁民の佐々木敦司氏はこう振り返っていた。「山口県見島周辺でマグロの一本釣りをしてきましたが、かつてはマグロが水面を跳びはねるほどで、巨大マグロだけでなく、20~100kgのマグロもたくさん獲れていました。しかし巻き網船が産卵魚を獲るようになって、まず小型魚が激減。大型魚も年々減っていきました」。

取材・文・撮影/横田 一 図/futomoji
― マグロが過去最低の漁獲量になった理由【1】 ―




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