松方弘樹「マグロの一本釣りは水産資源に優しい“エコ”な漁法」
水産庁は昨年12月、クロマグロの危機的状況を物語るショッキングな結果を発表した。それによると、クロマグロの資源量がここ数年で激減しているのだという。ワシントン条約の規制対象になるともいわれ、マグロが食べられなくなる日も近い!?
⇒【前編】マグロの漁獲量が激減 背景に巻き網漁 https://nikkan-spa.jp/803187
◆「自主規制」で野放しの巻き網漁
俳優の松方弘樹氏は’09年11月、2年連続で巨大なクロマグロを釣り上げた。その際、巻き網漁の規制強化も訴えていた。
「マグロの一本釣りは、獲る個体数はたいしたことはなく、水産資源に優しい“エコ”な漁法です。それに対して『巻き網漁』は漁業資源の枯渇につながる。これまで海外30か国以上で釣りをしてきましたが、規制が厳しい国ではちゃんと魚が獲れています。乱獲を放置している国はどこも漁業資源が枯渇している。日本も海外並みの規制強化をすべきです」(松方氏)
水産資源問題に詳しい勝川俊雄・三重大学准教授の試算によると、巻き網のマグロは平均53kgで漁獲総額は408億円(1尾あたり7万2000円)。一本釣りのマグロは平均100kg弱で2235億円(1尾あたり47万54円)。日本では巻き網漁が野放し状態のため、十分に大きく育って価格が高くなる前に乱獲してしまうという愚行が罷り通り、経済的損失と資源枯渇を招いているのだ。
昨年9月4日、太平洋クロマグロの資源管理(保護)を話し合う「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)」が福岡市で開かれた。その小委員会で、30kg未満の未成魚(幼魚)の漁獲枠を’15年から、実績の半分とすることで合意。危機的状況にあるクロマグロの資源回復が目的だが、沿岸漁民が求めてきた産卵期の巻き網漁規制が盛り込まれることはなかった。
国際会議に先立って水産庁は、昨年8月11日に壱岐島でマグロの資源管理に関する説明会を開催したが、不平等な規制内容に沿岸漁民の怒りが爆発。激論は4時間半にも及んだ。沿岸漁民が求め続けてきた巻き網規制が実現しないことへの苛立ちでもあった。
「海外では巻き網漁は禁漁期や禁漁海域が設定されていますが、日本だけは業界の自主規制に任されています。30kg以下の未成魚は厳しく規制するのに、30kg以上のマグロを獲る巻き網漁が甘い自主規制なのは不平等。資源回復も期待できない。両方同時に国が厳しい規制をかけるべきです」(勝川氏)
乱獲漁法「巻き網」を野放しにする水産庁や政治家の責任は重い。
取材・文・撮影/横田 一 図/futomoji
― マグロが過去最低の漁獲量になった理由【2】 ―
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