賞金総額7000万円のポーカー世界大会APPTソウル2015に挑戦!「気分はライオンの檻に放り込まれたウサギ」【後編】
「PokerStars」で開催されるオンライン予選を通過して、ポーカー世界大会「APPTソウル2015」に出場したスギナミ。指定されたテーブルは、右を向いても左を向いても強豪、プロ揃いの鬼の棲み家であった。「シャッフル・アンド・ディール」。涙目になりながらもトーナメントは開始された。
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後に判明した総参加人数は241人。それぞれ2万点のスタートチップを取り合って、最後の1人になるまで争われる。ブラインド(強制的に場に払うチップ)は1時間ごとに上がっていき、ジッといい手を待ち続けるだけでは、自然消滅してしまうのが、ポーカートーナメントがサバイバルゲームたるゆえんだ。
【レベル1】ブラインド50—100 20000点持ちでスタート
どんなに気を強く持とうとはいえ、やはり主導権は常に握られる展開。最初に参加した2ハンド。カットオフのポジションからA5でレイズ300→左隣のclutch heroからリレイズ700→フォールド(降りること)。続いてUTG+1のポジションからATでレイズ300→2番の中国人美女からリレイズ800→フォールド(涙)。
まだレベル1の段階で、これほど立て続けに攻撃を食らった記憶は過去にない。ポーカーは弱者を狙うゲーム。この2回のフォールドを見た他のプレイヤーも「8番のフィッシュ(日本語でいうカモ)は弱気で穴だ、アイツを狙え」と方針を固めたのか、記者がブラインドのときに参加率が高くなるという負の相乗効果。しかし、どんなにスキル差があっても、ここで引き下がってはジリ貧の一途。歯を食いしばって守りにいくが、よほど鼻が利くのか、こちらが強い手をヒットしたときには、スルスルっと逃げられてしまい、チップがまるで増えない。20000→14000→20000→13000という具合に厳しい状況が続く。一方、シート4のAcesup、シート9のclutch heroは着実にチップを増やし、レベル3終了時点では、Acesupが4万点、clutch heroは3万点近いチップを手にしていた。
【レベル4】ブラインド150-300 アンティ25 持ちチップ13000点
カットオフのポジションにいた記者まで全員がフォールド。ハンドを見るとAKsという強い手。レイズ800→左隣のclutch heroがボタンのポジションからリレイズ1800と、この日すでに4回目のリレイズが飛んできた。リリレイズ3800を返すとclutchは1分ほど考えたのちコールしてきた。
フロップ(8250) A Q 5
Aのペアができる。持ちチップ9000弱。これまで投じたチップ量的に降りられないので、「オールイン」(持ちチップの全額を賭ける)。すると、彼はKKを記者に見せながら、2秒でフォールドする。KKほどの強い手ならもう少し悩みそうなものだが、とにかくこのハンドに限らず、決断が恐ろしく早くて正確なのだ。その後、clutchは、何事もなかったように淡々とプレイし、KKで負けたチップを取り戻して4万点近くにまで増やす。一方の記者は、運良く勝ったにも関わらず、また1万5000近くにまで減らす低空飛行。これがスキルの差というわけだ。
記事的にはトッププロの強さを間近で見られることは光栄なのだが、一プレイヤー的にはもどかしさが続く状況。「このままコーチ2人が抜けていくんだろうな」と思っていたが、レベル6で異変が起きる。新しく入ってきたシート5のプレイヤーと、同じ4万点近いチップを持っていたcluch heroが激しくぶつかる。
フロップ T 8 7
細かいベットアクションは忘れたが、シート5のプレイヤーのオールインにcluch heroがスナップコール(即コールすること)。
ハンドはシート5が「99」のオープンエンドのストレートドロー(ストレートの両面待ち)、cluchが「TT」のトップセット(一番上の3カード)。「6」と「J」が落ちなければcluchの勝ちで、現在の勝率は75%。しかし、リバーに「6」が落ちて敗退してしまう。一回勝負のトーナメントでは、アクシデントは日常茶飯事。順当にチップを増やしていただけに、ほとんど観戦者と化していた記者にとっても残念だが、遅かれ早かれ大きな結果を出すことは間違いないだろう。
さて、プレイしていたことを忘れるほど存在感を消していた記者だが、待望のダブルアップをして25000点にまでチップを戻し、その日の最後であるレベル8へと突入する。この時点で125人のDAY1Bの参加者は、6割ほどに減っていただろうか。魔の6番テーブルはシャッフルされ、それぞれが別のテーブルへ移動することになる。
DAY1Bに参加した125人中の約50人が日本人ということもあり、新しく移ったテーブルは日本人が多い。そして記者の左隣には、弱冠21歳でWPTのタイトルを取ったMasato Yokosawaの姿が。一般的に、強いプレイヤーの右隣に座ることは損である(ゲームの順番的に、常にポジションが無い状態)。
【レベル8】ブラインド500/1000 アンティ100 持ちチップ22000点
新しく移ったテーブルで最初に参加したハンドは、UTGのポジションで配られたAK。2200にレイズすると左隣のYokosawaが5200にリレイズ。どうやっても降りられる状況ではないので、小考した後、「オールイン」と宣言。0.5秒くらいでコールされる。Yokosawaが開いたのは99。現状、勝率はほぼイーブン、いわゆるコインフリップというやつだ。結果、「A」も「K」も場には落ちず、敗退してしまった。
コインフリップに負けてトーナメントを去ることは悲しいことだが、それ以前にこの時点でテーブルの誰よりもチップが少なかったことのほうが敗因としては大きいだろう。実際、前述したAKvsKKでは、勝率30%にも関わらず「A」を拾って勝っているなど、不運とはいえない展開が続いていたからだ。
大会全体としては、まず記事に登場したプレイヤーの戦績は、Acesupが16位(賞金757万ウォン)、Masato Yokosawaが15位(賞金915万ウォン)で終了。優勝は生涯獲得賞金が1.5ミリオンを超えるJason Mo(アメリカ)が1億6559万ウォンを獲得、2位はPokerStarsプロのDiwei Huang(シンガポール)が9782万ウォンを獲得。強豪プレイヤーが上位に残る結果となった。
【スギナミ】
ポーカー歴3年。マニラの殺し屋のような風貌とガラス細工のハートを併せ持つ。’14年春、ジャパンオープンポーカーで優勝も、海外ではさしたる戦果なし。現在、大小合わせて20連続ノーインマネの記録を更新中
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