30歳・月収30万円を超えると退職勧奨する会社
ブラック企業といえば、IT系・ベンチャー系企業の専売特許のように言われてきた。しかし、最近は名の知れた老舗・同族大手企業にも、そのような実態がある。昨年事件になった大王製紙を皮切りに、知られざる内部事情を暴く
◆不動産投資失敗であおりをくう現場社員
「一言で言えば、僕のような営業部隊は単なる兵隊ですよ」
ため息を漏らすのは昭和初期創業の老舗薬品の営業マン、川崎辰雄さん(仮名・32歳)だ。
入社3年目の川崎さんは社用車に薬箱を詰め込み、1000件の顧客を巡回する日々を送る。
「社内用語で『ハサミ』と言われる新規開拓は、月間5件のノルマがある。毎月ある『勉強会』は、21時から深夜まで。ノルマに達しないやつは、『死んだほうがいいな』と“吊るし上げ”を食らう」
さらに退職勧奨もあるという。
「30歳を過ぎ、給料が30万円を超えると会社のお荷物になるのか、所長から『そろそろほかで働いてみるのもいいんじゃねぇ?』などと言われ、“圧力”がかかる。ただ、半数以上は勤務数か月でとんでしまいますけど。ただ、こんなに酷くなったのも創業者の前社長が、不動産投資に目覚めたのがキッカケらしいです。よく知らないのに都内の暴力団関連物件に手を出してしまい、その際、食い物にされてできた負債が、社員にしわ寄せとしてきている。もう満身創痍の状態です。辞める社員は多い。私も逃げ出したい気持ちです」
こんな状態というのもあり、ある種、習慣化した社員の“逃亡”を知った所長は、決まってこう叫ぶという。「あ、そうなの。次、採用しといて!」。
イラスト/テラムラリョウ
― 老舗・同族[大手ブラック企業]社員の叫び声【3】 ―
この特集の前回記事
ハッシュタグ