座間9遺体事件、被害者の頭部保管に精神科医が指摘「快楽殺人ではよくあるケース」
神奈川県座間市のアパートで、若い男女9人の切断された遺体が見つかった事件。10月31日の発覚から2週間が経過、少しずつではあるが詳細が明らかになるにつれ、その猟奇性に衝撃が広がっている。
死体遺棄容疑で逮捕された白石隆浩容疑者(27)が、現場アパートに入居したのは今年8月末。以降、2か月あまりの間に9人を殺害し、遺体をバラバラにしていたとみられる。殺害時期は8月に1人、9月と10月がそれぞれ4人。ほぼ1週間に1人を殺し遺体を解体していたことも異常だが、アパートの部屋には9人の頭部が保管されていたことにも大きな戦慄が走った。
頭部切断ですぐ思い浮かぶのは、1997年に兵庫県神戸市で起きた連続児童殺傷事件、いわゆる「酒鬼薔薇事件」だろう。
この衝撃的な事件から遡ること28年。1969年には、神奈川県で高校1年生が同級生男子を惨殺、生首を路上に放置する事件が発生、28年前の「酒鬼薔薇事件」といわれている。この事件とその後は、奥野修司氏の名作『心にナイフをしのばせて』に詳しい。それによると、同級生を殺害した少年は少年院を退院後、有名私大を経て弁護士になっていたことが判明、衝撃が倍増した。奥野氏の著書は、その後の少年法改正に一石を投じた。
今回の事件は当初、被害者と同様に自殺願望を抱いていた白石容疑者が、自ら命を絶つ仲間を募り犯行におよんだと思われていた。しかし、その後、「金銭目的」や「暴行目的」など供述は一転し、いまだ犯行動機は明らかにされていない。犯罪心理に詳しいある精神科医がこう分析する。
「次第に、殺害することと遺体を切り刻むことに性的興奮を覚える快楽殺人者となっていった可能性が考えられます。遺体の一部、今回の場合では頭部を保管していたのは、殺害後も快感の余韻に浸るためでしょう。こうしたことは、快楽殺人ではよくあるケースです」
自殺願望のある女性を呼び出すことに成功した白石容疑者は、ほどなくして女性を殺害。遺体の解体に着手した際、そこに快楽傾向を見出し、連続的な犯行におよんだのではないか。つまり、殺害→解体という一連のプロセスに快楽を感じる快楽殺人犯へと至った。そして、本人にもわからないまま、歯止めがきかなくなった。そんな推論が成り立つのである。
今回の事件と同じ神奈川県では、昨年、相模原市の精神福祉施設で19人が殺害される無差別殺傷事件が起きている。また2年前、同じ相模原市の墓地で若い女性の遺体が見つかった事件で、30歳の男が逮捕されたが、女性の長男(7)の行方がまだわかっていない。さらに昨年、横浜市の大口病院で入院患者2人が中毒死した事件も、捜査が難航し未解決のままだ。偶然ではあるが、神奈川県で相次ぐ重大事件に不安は募るばかりだ。
いずれにしても、今回の事件は白石容疑者の心の奥底に潜んでいた異常性が、何らかの事情で、また、どこかのタイミングで発露したのは間違いない。前代未聞のシリアルキラーの全容解明が待たれる。
<取材・文/青柳雄介>
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