実働300時間で手取り15万円…カリスマIT社長の下で働く超絶ブラックな職場環境
00年代、“ホリエモン”こと元ライブドア社長の堀江貴文氏が、「IT界の風雲児」として一世を風靡。そんな時流に乗ってか、IT業界の志望者が増加したのははるか昔。
中には、大手一流企業で働くことも可能なのに、自らを試すためあえてITベンチャーを選ぶという学生も少なくなかった。だが、実態はその多くが低賃金で従業員を酷使するという企業体質であるため、ITベンチャー業界は離職率が高く、常に求人を行うブラック業界というイメージが付きまとったことについてはいまさら説明不要だろう。
東京都在住の阿部洋介さん(仮名・31歳・男性・早稲田大学卒業)も、当時量産された「ITベンチャー信者」の一人であった。洗脳を解かれ、現在はホワイトIT企業で働く彼は、当時の惨状を淡々と話してくれた。
早稲田大学の理系学部に在籍していた阿部さんの専攻は光ファイバー。特別に情報技術を学んだわけではないが、東京ビッグサイトで行われた合同説明会で異彩を放っていたそのITベンチャー企業のブースに強く惹き付けられたという。そこには、自信に満ち満ちた若手社長の姿があった。
「ITで世界を変える」
そう話す社長の情熱と男気に惚れた阿部さんはエントリーを決意。勢いを買われ、簡単な面接だけで入社を果たすことができた。しかし後に、その社長がITにさして詳しくない口八丁な人物という事が明らかになる。
シャカリキの内定者たちを待っていたのは、「山の頂上から社訓を叫ぶ」「山道20kmマラソン」など、体育会系極まれる研修。そこで社長から直々に「社会人たるもの長時間労働は当たり前」と説かれたのだ。
「内定が出るやいなや、僕らは学業の傍ら無給で会社に通わされ、ホームページ作成など会社の根幹に関わるような仕事の一端も担わされました。どう考えても異常な状況でしたが、当時の考えは違いました。周りが遊んでいる中、社会人になる前からがむしゃらに働く自分は“正義である”と盲信していたんです……」
そんな調子で一旗あげようと意気込んで入社したものの、新入社員を待っていたのは資料の全角を半角に直すなど、細かい雑務の繰り返し。
ITの専門技術とはおよそ無関係なものばかりだった。ちなみにこの「資料の細かいミスをネチネチと指摘され、何度も無意味な訂正を強いられる」というエピソードは、ブラック企業経験者の多くが話す鉄板ネタだ。阿部さんはしばらくの間、「下積みを我慢すればいつか……」と耐えて過ごした。
その頃の実働時間は1日15時間以上で月300時間超。一方、給料は額面18万円、手取り15万円という長時間労働に見合わない金額だった。
「上司は『頑張ったらボーナスが出る』と話していましたが、それは社員を煽るための真っ赤な嘘。実際ボーナスは一切支給されませんでした。また、未経験の人材を経験者SEとして詐称して現場(取引先)に送り込んでおり、その後トラブルになっていましたね」
ITとは真逆のアナログ新人研修
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