令和の瞬間はバイト先の真っ暗な休憩室で…。40代アルバイト男性の悲哀
今年のゴールデンウィークは前代未聞の“10連休”、そして“令和”の幕開けで大きな話題となった。まるで年の瀬のように各地でカウントダウンイベントが開催され、若者たちがお祭り騒ぎとなっていたが、それを心から喜べなかった人たちもいる。
1990年代半ばから2000年代前半は“就職氷河期”と呼ばれ、社会に出ようとする若者たちは深刻な就職難に見舞われた。なかには、非正規雇用者とならざるをえなかった人たちがいることを忘れてはならない。あれから20年あまり……。
ゴールデンウィークと令和の瞬間、彼らはどう過ごしていたのか。
4月30日、午後8時頃——。多少飲んでいるらしい男2人、女3人の若いグループが、JR千葉駅発の三鷹行き総武線車内で騒いでいた。渋谷か新宿か、あと数時間後に迫った「令和の瞬間」をどこで過ごすか決めかねているようである。
連中の真横に座っていたのは派遣アルバイトの高梨勇さん(40代・仮名)。前年「1割れ」した大卒者の有効求人倍率がやっと1台に回復した2001年、関西地方の中堅私大を卒業し、都内の大手通信会社の孫会社に就職。営業部に所属し2009年頃まで働いたが、給与はいつまでたっても手取りで20万を越えず、不況と本社の事業再編騒動に巻き込まれる形で退職を余儀なくされた。
「すでに30を越えていて、手についた職もない。とりあえず食うために……と思い始めた派遣アルバイトですが、気がつけばもう10年オーバー。まわりに同じような境遇の人もいるからか、もう抜け出せないですね、この環境から」(高梨さん)
若いグループを尻目に、高梨さんが降り立ったのは千葉県の西船橋駅。朝夕は南口側道路に、マイクロバスやワゴン車がズラリと並ぶ。そのほとんどが、少し離れた湾岸部で働く倉庫内作業員、工場作業員を送迎するために、派遣会社や親会社などが用意した車両だ。
平成も残りわずか……などという感傷に浸るヒマはない。停まっていたひと際古臭いワンボックスカーの運転手に一瞥すると、近くのコンビニに立ち寄り、100円のチキンと紙パックの紅茶、「味はイマイチだが安くて大きくて腹にたまる」というパンを購入し、ワンボックスカーに乗り込んだ。
車を運転するのも、高梨さんが登録している会社の派遣社員。年齢は50歳近く、高梨さんの先輩にあたる。倉庫作業員を10年以上勤めたあと、ヒラの派遣社員の送迎、勤怠管理を行う役職に“栄転”したのだという。
「いくら軽作業つったって、アラフォーやアラフィフにはきついです。車の送迎と勤怠管理の事務作業だけなら、そっちのがラクですよ。時給は1200円だそうです。僕らより100円も高い。運転手の後釜は俺だ、って密かに狙っている人間は少なくないですよ」(同上)
令和の瞬間は倉庫の休憩室「なんの感動もなかった」
新聞、週刊誌、実話誌、テレビなどで経験を積んだ記者。社会問題やニュースの裏側などをネットメディアに寄稿する。
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