ラグビーW杯の応援歌、女子5人「リトグリ」が歌うNHKテーマ曲の王道感
日本代表の快進撃に沸く、ラグビーワールドカップ。日本戦の中継は軒並み高視聴率を記録し、予想以上の熱気に包まれている。
この激闘を盛り上げるNHKのテーマソングが、女性5人組ボーカルグループ「Little Glee Monster」(通称リトグリ)が歌う「ECHO」(作詞・作曲 今井了介)だ。試合前には気持ちを高ぶらせ、ハイライトでは感動と興奮がよみがえる。実によくできたスタジアムロックなのだ。
オリンピックやサッカーワールドカップなど、近年のスポーツイベントに欠かせないのが音楽だが、歴代のイメージソングを振り返っても、王道のアンセム(応援歌)は見当たらない。「栄光の架橋」(ゆず)や、「タマシイレボリューション」(Superfly)などは人気曲だが、どちらも感動と興奮の一要素に振り切ってしまっているから不十分だ。アンセムには、その種のエモーションを超越した重厚さが不可欠なのだ。
その点、「ECHO」にはどっしりとした様式美がある。「We Will Rock You」(クイーン)を思わせるリズムパターンに、ひりひりとした緊張感が漂うマイナーコード。そこからメジャーコードの雄大さへと開けていくカタルシスには、抗えないものがある。リトグリの5人が拳を突き上げて雄たけびをあげるパートが、「Roar」(ケイティ・ペリー)へのオマージュになっている点も見逃せない。
新旧スタジアムロックの方法論を踏襲した楽曲は、言ってしまえば予定調和だ。だが、時にはベタが物を言う。堂々と正攻法で臨んだ今井了介氏(47)とリトグリに敬意を表したい。 「ECHO」は、日本のスポーツ放送史上、最もスポーツらしさを具現化した曲である。
ただし、表現の方法が実直に過ぎる点は指摘しておくべきだろう。詞、曲、歌、サウンド。これらのトーンが皆一定で、柔軟性に欠けるからだ。
たとえば、<無駄な汗・涙 一滴もない>、<この一瞬の プライドに、笑顔に、涙に、賭けてきたのだろう…>と歌うリトグリからは、ありったけの根性がたぎっている。加えて、楽曲やサウンドも、ハイテンションのまま突っ走る。
ここに、スポーツというとすぐに美談を期待する日本人の弱点が表れているのではないだろうか。団結、勇気、感動を、恥ずかしげもなくむさぼる。“熱闘甲子園化現象”とでも言えばいいだろうか。そのとき、置き去りにされるのはユーモアであり、引きの視点で見つめる理知である。
皮肉にも、「ECHO」は完成度の高さゆえ、そんな脆さを浮き彫りにしてしまった。だが、それも王道に向き合ったからこそ得られた課題とも言える。
その意味でも、「ECHO」が今後のスポーツソングの基準となったのである。
<文/音楽批評・石黒隆之>音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4
【Little Glee Monster】:2013年に結成、現在のメンバーは18~21歳の女性5人。2018のアルバム『juice』、2019『FLAVA』などがヒットし、日本武道館公演2Days公演にて2万5千人を動員した。2017-18年の紅白歌合戦に出場
女性5人グループの堂々たるスタジアムロック
その点、「ECHO」にはどっしりとした様式美がある。「We Will Rock You」(クイーン)を思わせるリズムパターンに、ひりひりとした緊張感が漂うマイナーコード。そこからメジャーコードの雄大さへと開けていくカタルシスには、抗えないものがある。リトグリの5人が拳を突き上げて雄たけびをあげるパートが、「Roar」(ケイティ・ペリー)へのオマージュになっている点も見逃せない。
新旧スタジアムロックの方法論を踏襲した楽曲は、言ってしまえば予定調和だ。だが、時にはベタが物を言う。堂々と正攻法で臨んだ今井了介氏(47)とリトグリに敬意を表したい。 「ECHO」は、日本のスポーツ放送史上、最もスポーツらしさを具現化した曲である。
根性、団結、感動が分かりやすすぎるが…
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