40~60代の中高年ひきこもりは61.3万人。ひきこもる6つの要因
20万部を突破した『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』(朝日新書)の著者、藤田孝典氏の新刊『中高年ひきこもり-社会問題を背負わされた人たち-』(扶桑社新書)が11月2日に発売された。
平成30年度の内閣府調査によると、40~60代の中高年ひきこもりは61.3万人にのぼるという。
15~64歳のひきこもりの全国の推計数は115万人で、ひきこもりの半数以上が40歳以上であると報告。
つまり、若年層よりも中高年層のほう多いという衝撃的な事実が明らかになったのだ。
『中高年ひきこもり』では、より広範な視点から、社会全体や日本全体に広がる構造的な問題として取り上げている。
この『中高年ひきこもり』の発売を記念して、藤田孝典氏が聖学院大学の学園祭で「広がる中高年ひきこもり」と題した講演会を行った。
会場には学生だけでなく、40代、50代以上の高齢者も多数聴講していた。
まず藤田氏は「“ひきこもり支援=就労支援”と思っている人が多いが、それだけでは不十分」と指摘した。
それは、昨今のブラック企業に代表されるように企業の中にパワハラが蔓延しているという実態があるからだという。
各都道府県の労働局に寄せられた意見によると、全労働者の30%が過去3年間にパワハラを受け、そのうちの10%は繰り返し受けているという実態が明らかにされた。
だからこそ、中高年ひきこもりの当事者を就労の現場に入れただけでも、そこでまたパワハラを受けてしまう可能性もあるので、十分ではないというのである。
「職場の構造を変えていかない限り、ひきこもり対策にはならない」と藤田氏は語っている。
中高年ひきこもりが起きる要因は何か?
藤田氏は『中高年ひきこもり』での当事者インタビューをもとに以下の6つを挙げている。
1. 女性のひきこもり問題とジェンダー、性的マイノリティ
2. 労働問題との関連(パワハラ、リストラ、ブラック企業)
3. 不登校と中高年ひきこもりの関連
4. 専門相談機関の不十分なケア制度
5. 発達障害への対応の不足
6. 親や保護者からの影響、関係性の悪化
女性のひきこもり当事者は、数がなかなか可視化しづらく、水面下にはかなりの人数がいるともいわれている。
可視化しづらい理由のひとつには、相談機関の相談員が男性ばかりで女性のひきこもり当事者が相談しに行きにくいからだという。
そのため、女性相談員の増加を急務であるとも藤田氏は提案していた。
また、65歳以上の要介護のひきこもりも起きている可能性があると藤田氏は警鐘を鳴らしていた。
61.3万人は氷山の一角で、実際は100万人以上もいるといわれている中高年ひきこもり。
藤田氏はこの状況について以下のように語っている。
「ひきこもりになっている人の大半は本人のせいにされてしまっている。当事者自身の中にも自分が悪いからと思っている方が多くいる。
しかし、当事者だけを更生しようとしても対策にならない。当事者以上に地域や社会のしくみを改善させない限り、この問題は解決しないように思います」
これから高齢化社会が進み、中高年ひきこもりはさらに増加する可能性が高い。
それに伴って、8050(ハチマルゴーマル)問題も深刻な状況であるのだ。
今すぐ対策が急がれている。
藤田孝典(ふじた たかのり)
1982年生まれ。NPO法人ほっとプラス代表理事。聖学院大学人間福祉学部客員准教授。反貧困ネットワーク埼玉代表。ブラック企業対策プロジェクト共同代表。厚生労働省社会保障審議会特別部会委員(2012年度)。ソーシャルワーカーとして現場で活動する一方、生活保護や生活困窮者支援のあり方に関する提言を行う。著書に『貧困クライシス 国民総「最底辺」社会』(毎日新聞出版)、『下流老人』『続・下流老人』(ともに朝日新聞出版)など
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