更新日:2023年05月18日 16:33
エンタメ

元NHKのヒットメイカー・大友啓史監督が最新作『影裏』に込めた想いとは?

 NHKの職員でありながら、長回しや大胆な陰影といったダイナミックな演出で『ハゲタカ』『龍馬伝』などの話題作を手がけてきた大友啓史。映画監督として独立した後も、『るろうに剣心』『3月のライオン』『億男』などで高い評価を得ている。そんな彼が、綾野剛と松田龍平をキャストに迎えて撮った最新作『影裏』が2月14日に公開される。 大友啓史 沼田真佑による芥川賞受賞作を基に、岩手に転勤してきた会社員の今野(綾野)が、そこで親友となるも失踪を遂げた日浅(松田)を捜すうちに、知り得なかった親友の闇に踏み込んでいくさまを見つめた人間ドラマ。これまでの大友監督にはなかった静謐な作風だ。 「ハリウッドに負けない映画」を掲げ、常に新たな引き出しで日本映画界を牽引する彼に、組織を抜け出して独立した経緯や覚悟、映像へのこだわりについてぶつけてみた。

『影裏』が芥川賞を受賞する前から映画化を考えていた

――原作が芥川賞を受賞する前から映画化を考えられていたそうですね。 大友:本屋で『影裏』というタイトルを見てすごく惹かれたんですよね。それで読んでみたら、わかりやすさを求めるお客さんが欲するようなものは何ひとつ書いていなくて、行間にすべてが凝縮されているような小説だった。でも、そういう媚びのないものって、ただ与えられるよりも面白いじゃないですか。そういう感じって、フランスのネオ・ヌーヴェルヴァーグとか、僕が学生時代の映画にはよくあった。若造にはピンとこないところもあったけど、心がざわつきました。  田舎の野球少年だった自分には、ゴジラとかブルース・リーのアクション映画とはまた別の、“なんかヤバイ感じ”の映画体験だったんです。『影裏』は、そんなことをふと思い起こさせてくれたんですよ。そこで、何かジャズが聴こえてきそうな、あからさまにこうだというものとは違う匂いのするものを作れるんじゃないかと思ったんです。
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綾野剛は文学、松田龍平は映画の匂いをまとう稀有な役者
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ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。X(旧Twitter):@mochi_fumi

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