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在宅ワークの長期化で高まる「死に直結する4つのリスク」とは?

アフターコロナ症候群は、社会の弱体化を招く危険性も

 新型コロナウイルス拡大として自粛生活を強いられて約3か月。その間に「体力が落ちた」「疲れやすくなった」「物忘れがひどくなった」「うつ病気味になった」といった不調を自覚し始めた人々は実に多い。
アフターコロナ症候群

「通勤できない」と不調を訴えるサラリーマンも

 これは、閉じこもりや社会的孤立から起こる症状だといわれている。アフターコロナ症候群、通称「コロナぼけ」ともいえるこの現象、実はここ数年社会の高齢化が進む中で取り沙汰されている「フレイル」に酷似している。  フレイルとは、ストレスにさらされることで容易に健康が損なわれ、要介護や最悪、死に至る高齢者の心身の“脆弱性”が増した状態のこと。身体的、精神心理的、社会的の3つに分類されており、先に挙げたコロナぼけと同じ状態が見られるのだ。  フレイルにも詳しい老年内科の座間清氏は、これらの共通点に対してある見解を持っている。 「未知の新型コロナウイルス感染の不安、外出自粛による社会的隔離や経済的な問題などが精神的ストレスとなり、若年層にも認知機能の問題が起きる可能性は十分にある。疾患のみならず、外的ストレスという環境はフレイルと共通した発症要因と考えられます」
アフターコロナ症候群

座間 清氏

 また、心療内科医の内田栄一氏はこう語る。 「刑務所とほぼ同じ状況下において発生する拘禁反応に近い。自宅など狭い場所で長期間過ごすと認知機能と情緒に障害が出てくる。筋力が衰えていくのと同じで、日々いろいろな方面へ使っている神経を使わなくなるため、一時的にうつ状態や情緒の乱れが起きてしまうんです」
アフターコロナ症候群

内田栄一氏

 加えて、人間には非常に優れた「適応力」があるため、たとえ2週間でも1か月でも「何もしない」「いつもと違う日常」を過ごすことで心身がその状況に慣れてしまい、ボーッと過ごすなどの反応が出てきてしまうというのだ。

無重力状態で長期間過ごしているのと同じ!?

 一方、スポーツ医学の分野において中高年の筋力トレーニングや健康政策などを研究する久野譜也氏は、今回の現象を「健康2次被害」と捉えている。 「筋肉の問題に特化して言えば、宇宙飛行士が無重力下で過ごして地球に帰還すると筋肉量がかなり減少してしまう『ベッドレスト』を外出自粛下で社会実験しているように感じられます」
アフターコロナ症候群

久野譜也氏

 筋肉量は30代から減少し始め、40代からは年1%の割合で減っていくのに対し、ベッドレストをすると数か月で1年分ほどの筋肉量が落ちてしまう。外出自粛とはいえ運動は制限されていないはずだが、それでも筋力の低下、物忘れ、抑うつ状態となる原因について、久野氏はこう指摘する。 「特にここ最近はあまりにもいい加減な情報が氾濫しすぎています。それが社会の不安を煽り、誤った情報でコロナを恐れて巣ごもり状態になる人を増やし、結果として心身の健康に悪影響を与えていると考えられます」  また今後、リモートワークを単に効率性のみで推奨することにも警鐘を鳴らす。 「’09年にWHOが世界中の論文を精査して死因のワースト20を発表しているのですが、上位は高血圧、高血糖、運動不足、肥満でした。出社すればトイレの距離も在宅より長いなど、意識せずとも一定の活動量があったのに対し、リモートワークでは座位の時間が増え、圧倒的に活動量が減ってしまいます。これによって先に挙げた死因のうちの4つのリスクが高まり、長期間続けば健康被害をもたらす。企業は今後、その点も考慮しなければならないでしょう」
アフターコロナ症候群

不眠になった

 またアンケートでも体重の変化や生活リズム、運動能力や他者との会話など不具合を感じる部分は多岐にわたる。これについて座間氏は、「“コロナぼけ”は、コロナに起因する多様なストレスに対する反応性の抑うつから発症し、同時期に多発すると考えられます」と言う。これらがリカバリされないままだと、社会全体に停滞をもたらすことは必至だ。
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