コロナ後遺症の29歳「1か月たってもチョコの味がわからない」医師が解説
新型コロナウイルスは症状が回復したとしても安心できない。治ってからの“後遺症”に悩む症例が医療現場から報告されている。日本ではすでに6万人以上が新型コロナウイルスから回復して退院したが、その中には後遺症によって元の生活を送れずに悩む人も多数いる。
大牧さんの症状自体は、軽症だった。7月30日に37.5度の発熱が出て、翌31日には熱が下がった。しかし、8月1日から味覚と嗅覚に異変が出始めたという。
「最初は『味が薄いな』くらいの感じだったのですが、どんどん感覚が鈍くなっていきました。そこからは何を食べても味がしないし、匂いもほとんど感じなくなりました。その時点で『新型コロナウイルスなのでは?』と思い、PCR検査を受けたところ陽性反応が出てしまいました。
その後は自宅で安静にしていましたが、味覚と嗅覚の異常はずっと続きました。特にツラかったのは、鼻の奥が炎症を起こしているせいか呼吸するとツーンと痛むこと。四六時中痛みがあるので、精神的に参りましたね」
発症から1ヵ月経った今でも味覚と嗅覚の異常は残っている。
「現在は、味覚と嗅覚は7割くらいに戻りました。ただ物によって味がするものとしないものがあります。たとえば同じ甘い物でも、チョコはあまり味がしないですが、ミックスジュースは味がします。ご飯とお肉は味がするけど、醤油は味がしなかったりする。すぐ熱が下がったので大丈夫かと思っていましたが、思っていた以上に後遺症があるからツラいですね」
この症状について内科医の橋本将吉氏に解説してもらった。
「これまで出てきた症例から判断するに、新型コロナウイルスの特徴として味覚と嗅覚に影響を及ぼしやすい可能性があります。おそらくどこかしらの神経にウイルスが潜んでいて神経を障害しているのでしょう。
ただ味覚、嗅覚は末梢神経なので、時間が経てば落ち着いてくる可能性があります。大牧さんの場合は徐々に回復してきているようなので、過度に不安になる必要はないかと思います」
ただ、新型コロナウイルスについてはまだ未知の部分が多い。
「世界中で研究が進められていますが“新型コロナウイルスが神経のどこに影響を及ぼしているか”といった詳細は、時間がもっと経たないと分からないと思います。というのも、ウイルスはどんどん変異していくからです。日本で変異したウイルスと中国で変異したウイルスはまったく別物。世界中で研究が進められていますが、それぞれの地域で研究して出てきたデータはあってもそれを統合することは難しいかもしれません」
味覚と嗅覚の異常だけでなく、息苦しさや疲れやすさといった後遺症を訴える人も多い。大牧さんも呼吸器系の後遺症に悩まされている。
「発症してから1週間後から息苦しが出てきました。もう治ったと思っていたので、再発したのかと思ってびっくりしましたね。それからは体調がいいときもあれば、悪いときもある。体調が悪いときは動悸がするし、疲れやすいです。
日常生活はできるけど、しんどくて息苦しい感じがずっと続いています。たとえば自宅のマンションの3階の階段で途中で休憩が必要になることも。今まで普通にできていたことができないのがツラいです。この後遺症が半永久的に続くとなったら不安しかないですね」
この呼吸器系の後遺症については、肺の炎症が関係していると橋本医師は語る。
7月末に新型コロナウイルスに感染した大牧雅之さん(仮名・29歳)は、感染から1ヵ月経った今でも味覚と嗅覚に違和感が残っている。
発症から1か月経った今でもチョコの味が分からない
医師が解説。ウイルスによって末梢神経の働きが阻害されている
後遺症によって今まで普通にできていたことができないツラさ
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現役の内科医師。日本内科学会、日本医学教育学会、日本病院総合診療医学会、日本心療内科学会所属。株式会社リーフェの代表取締役を務める。YouTuber「ドクターハッシー」として健康情報を発信しつつ、未来の医師を育てる医学生のための個別指導塾「医学生道場」の代表を務める。
Twitter:@karada_plan
youtubeチャンネル:ドクターハッシー
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