シャインマスカット
近年、スーパーでもよく目にするようになった「シャインマスカット」。種がなく皮ごと食べられることや、女優・アナウンサーの田中みな実さんが「毎日食べる」と公言していることでも人気のぶどうだ。
同じく種がなく皮ごと食べられるぶどうとして人気なのが「瀬戸ジャイアンツ」だが、この2つの違いはどのようなものなのだろうか。そして果たしてどっちが美味しいのか……それぞれの魅力と、過去には『マツコの知らない世界 種ありぶどうの世界』に出演、岡山市北区津高にて100種類以上のぶどうを栽培している「林ぶどう研究所」の林慎悟さんに聞いた。
「林ぶどう研究所」の林慎悟さん
ぶどうはなぜこんなにも品種が多いのか?
ぶどうの種類といえば、前述の「シャインマスカット」と「瀬戸ジャイアンツ」そして巨峰くらいしか知らなかったが、林さんのホームページ
「林ぶどう研究所」を見ると実に100種類以上のぶどうの種類があることに驚かされる。
「実はホームページに掲載しているものだけでなくまだまだ種類があります。そもそも、ぶどうはヨーロッパ・中東・地中海といった降雨の少ない乾燥地域で栽培されていたものが多く、日本のように環境はあまりぶどう作りには向いていません。そのため、日本の環境でも作ることができるようにと品種改良が繰り返されてきました。加えて、日本人好みの味へと改良を重ねた結果、品種がここまで増えたのです」(林さん、以下同)
とはいえ、一般流通されて我々が目にすることのできるぶどうの品種は限られているように思うが、なぜなのだろうか。
「たくさんのぶどうの種類の中でも、一般流通に乗るものは、生産者にとって栽培がしやすく、日本人の好みに合っていて、さらに輸送中に傷みにくく店頭での持ちがいいもの……と条件が限られてきます。
たとえば一時期よくお店でも目にしていた”翠峰”は、実は栽培しにくく外観に黒点があるため見映えがあまりよくないこと、そして粒が輸送中に房から外れてしまいやすいことから最近ではあまり見かけなくなってしまいました」
なぜ最近シャインマスカットを多く目にするようになったのか
近年、やたらと店頭でシャインマスカットを見かける機会が増えてきたのは、作りやすく輸送中にも耐えうる「生産者側の流通させやすい理由」に加え、消費者が求める「わかりやすい美味しさ」も影響していると林さんは話す。
「
シャインマスカットは糖度(甘さ)がとてもわかりやすく、消費者の方にとっても『とても甘い=美味しい!』と感じやすいことから人気が高まっています。シャインマスカットは病気にもなりづらい品種ですし、房から粒をもいだ後も長持ちしてくれるんです。生産者と消費者どちらの視点から見ても安定感のある品種なんですよね」
そんなシャインマスカットと「似ている」と比較されやすいのが「瀬戸ジャイアンツ」という品種。共に種がなく、皮ごと食べられることで同じくくりにされることが多い印象だが……。
「瀬戸ジャイアンツは約40年前に誕生し、シャインマスカットは約30年前に誕生しています。そこまで歴史に差があるわけではありませんが、そもそも全く血筋というか、系統が異なるものなんです」
瀬戸ジャイアンツ
実は
瀬戸ジャイアンツはヨーロッパ地方の品種特性をもった掛け合わせの品種。ヨーロッパ系のぶどうを日本でも栽培しやすいようにと研ぎ澄ませていったもので、
味はいわゆる「果物」っぽい甘さが特徴だ。
一方で、
シャインマスカットはお菓子のような「砂糖」っぽい甘さが特徴。元々はアメリカの品種特性を持っていたものを日本人好みの味に改良したものだという。
「だからそもそも血筋も全く異なるものですし、全くの別物だという認識ですね。とはいえ、食感は近くどちらも果肉がしっかりとした食感でかため、皮ごと食べられるという部分は共通しています」
インタビュー・食レポ・レビュー記事・イベントレポートなどジャンルを問わず活動するフリーランスライター。コンビニを愛しすぎるあまり、OLから某コンビニ本部員となり店長を務めた経験あり。X(旧Twitter):
@KA_HO_MA記事一覧へ