インドの現地スタッフ350人「切り抜きjp」完全テレワークへの悪戦苦闘
新型コロナウイルス収束の兆しが見えない今、企業の存続において、従業員の「テレワーク」体制の構築が課題となっている。国内外で今年の春頃から外出自粛要請が出され、従業員の身動きがとれないなかで倒産の危機に陥った企業も少なくない。「切り抜きjp」というサービスを運営する株式会社メディア・バックオフィスもそのひとつだ。一時は売上ゼロに……。
「正直、事業の存続自体が危ぶまれていました」
同社の渡邉堅一郎社長が感慨深く振り返る。現在は、前年比で9割程度まで回復。その裏側では、拠点となっていたインド農村部における“従業員の完全テレワーク化”に向けた悪戦苦闘があったという。
近年、Webサイト運営を行うフリーランスの増加や、個人で簡単にECサイトを運営できるサービスの流行で、画像の輪郭を精緻に切り抜く「画像の切り抜き作業」のニーズが高まっている。じつは、AIの技術が発展した現在も完全自動化は実現されておらず、精度の高い画像の切り抜きは、Photoshopなどの画像編集ソフトを使用して“手作業で行う必要がある”という。そのため、デザイナーなどの手を煩わせる労働集約的な作業となっているのだ。
「切り抜きjp」は、そんな画像の切り抜き作業に特化したサービスである。雑誌、カタログ、チラシなどの紙媒体をはじめ、ネットショップなどのWeb媒体の制作者なら、一度はお世話になったことがあるかもしれない。
南インドの主要都市バンガロールから100kmほどに位置する農村部に拠点を構え、現地で作業員を雇用・育成し、低価格・高品質なサービスを可能に。24時間350名の作業体制で96%超という納期履行率を誇る「切り抜きjp」は、出版社との取引も多い。
たとえば、ファッション雑誌などでは洋服の写真が多数掲載されているが、ページのレイアウト作成において、大量の物撮り画像(※商品の写真)の切り抜きが必要となる。
締め切り直前のギリギリの状況では、無茶振りにも思える発注でも早技で仕上げてくれるため、かなり頼れる存在だった(たとえば、夜に発注して翌日の午前中には納品してくれている、など)。
とはいえ、まさかインド人スタッフの手によるものだったとは……。
「中国で受注していた時期もありますが、人件費が上がってきた関係で8年ほど前からインドに拠点を置いています。インドの農村というとスラム的な場所を想像されることもあるんですが、田舎なので周りの環境も綺麗で。候補地として東南アジアなども検討していましたが、今の場所を見た瞬間に直感で決めました。ジョブフェア(※就職イベント)で20km圏内くらいのエリアから人を集めていて、24時間3交代制のシフトなので自社で通勤バスを走らせています」
ネット環境もままならない地で、いかにして大容量データのやりとりができる高速通信を整備し、従業員の安全や雇用を守ったのか。今回は、そんな舞台裏を聞いた。
Web時代も完全自動化されていない画像切り抜き作業
24時間3交代制、インド人スタッフの手作業によるものだった!
1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii
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