ミシュラン修行シェフ、奮闘。コロナ禍を生き抜く“出張とんかつ店”の仰天アイデア
コロナ下で大打撃を受けた飲食業界。第3波の猛威はすさまじく、収束の気配は見えない。感染者数の最高値更新が続き、出口の見えない日々を余儀なくされている。
この苦境を抜け出そうと、テイクアウトやお取り寄せで活路を見出そうとする店が増えるなか、とんかつ界に新潮流を生み出した店がある。その名も、「Tonkatsu ARI(トンカツ アリ)」。副題に“移動型ラグジュアリー トンカツ店”と冠するように、ここで紹介するのは、移動販売形式のとんかつ店だ。
注文が入ると、移動式キッチンカーで発注元まで出向き、車内で調理。揚げたてのとんかつを提供する。決まった場所で屋外営業するのではなく、お客さんの自宅や職場の目の前まで出向いて調理するのがコンセプト。
この新業態を主導した三本秀之さんは、もともと『ミシュランガイド』の5,000円以下の部門「ビブグルマン」に幾度となく掲載されている有名とんかつ店で、スーシェフとしてキッチンを任されていた人物。その際、培った技術と目利き、人脈を駆使して、最高級のとんかつをその場で揚げてくれる。
「はじめはテイクアウト専門で簡易的なとんかつ屋台を始めようと準備していましたが、『とんかつはやっぱり揚げたてを食べたい』という声が多く、ならば、こちらがキッチンごと持って伺おう! と。とんかつを揚げてきた身としても、揚げたてをすぐに食べてもらえるのは、目からウロコでしたね。思い切って立ち上げた事業ですが、一日の売上が10万円を超える日も出てくるようになりました」
ここで特筆するのは、“揚げ”のクオリティだ。
見た目は、“白い衣に包まれたレアステーキ”。淡いピンクの断面に溢れ出す透明な肉汁は、旨みをまとっている証とも言える。噛みしめると、驚くほど柔らかい肉質と甘みのある脂に、自然と頬がゆるむ。
「揚げるのは、その時期にあった厳選した黒豚。肉の脂身の融点が低く、口の中でとろける食感と、サラッとしつこくないのを厳選してます」(三本氏)
さらに、肉を極限まで柔らかく仕上げるためにこだわったというのが、揚げ油の温度。
「ロースは300g近く、ヒレは250g近くもある、こぶし大サイズの塊肉を、中央まで均一に火を通そうと温度を上げると、どうしても肉質が硬くなってしまう。そこで試行錯誤を重ねた結果、塊を4分割に分けてカットしてから揚げることで、低温でも内側まで火が均一に通るようになりました」
三本氏がこだわり抜いた新作「黒カツサンド」も、人気を博しそうな逸品だ。
「最近ではケータリングやハイブランドのレセプションパーティに出張する機会も増えたのですが、目を引いたのか『黒かつサンド』は大好評でした。炭が織り込んであり、ヘルシーです」
■飲食店は店に行く時代から、店が来る時代へ
■揚げ油の温度にもこだわる
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