奈良公園のシカ、気性が荒くなったのは誰のせい? 深夜の招かざる客たち
文化財や自然公園が点在し、日本国内のみならず外国からも多くの人が訪れる奈良。1年ほど前までは外国人観光客で賑わっていたが、ここ最近は新型コロナの影響で少し寂しい印象を受けてる。
「昨年は、春日大社で毎年行われる『赤ちゃん鹿の公開』から『若宮おん祭』など様々なイベントが中止になりましたね。慰安旅行や修学旅行のツアーバスも見かけなくなり、鹿せんべいの売上も8割減にまで落ち込みました。昨年、鹿が激痩せしたという噂が出回ったことがあったじゃないですか。激痩せの鹿はいなかったけど、外国人観光客が多かったときの鹿は鹿せんべいを食べすぎて太り過ぎていたんですよ。その頃に比べると今の鹿は少し痩せた印象を受けますね」
そう話すのは奈良公園付近で鹿せんべいなどを販売する売店の店員。確かに2018年に訪れたときに比べると、鹿は少し痩せたようにも見える。だが本来、鹿は草食動物。せんべいを食べなくても公園内の草や木の実を食べていれば問題ないのではないだろうか。
「公園内の草や木の実を食べ尽くしてしまったんです。冬で食料が少ないということもあり、鹿がお腹を空かせているというのは事実ですね。民家に入り込んで、庭に植えてある植物の木の実や果物を食べてしまうことが問題視されています。また、お腹を空かせているので以前よりも気性が荒くなっています。せんべいを買おうとした人の服を噛んだり、ツノで突いたり追いかけ回したり。それで皆、怖がってしまって鹿せんべいを購入する人も減ってきていますね」
だが、問題視されていることはそれだけではない。昨年の激痩せの誤報道が流れたとき、鹿に人間の食べ物をあげる人が続出したのだ。鹿の身体に有害な影響を与えると、県の愛護会が「鹿せんべい以外の餌を与えないように」と呼びかけているが。
「餌を与える人は減ったのですが、お腹を空かせた鹿が夜中に公園を出て餌を探しに徘徊するようになったんです。奈良は緊急事態宣言は出ていませんがこの周辺の居酒屋は深夜0時には閉店するんです。以前は大阪で遅くまで飲んでいた若者が、時短で飲みに行く場所がなくなったせいか駅前のコンビニでお酒を買って公園で深夜に酒盛りをするように。
つい先日も夜中2時頃まで若者が騒いでいました。朝、公園に行ってみると大量の空き缶やスナック菓子の袋が落ちていて、それを鹿が食べてしまうんです。ビニール袋を飲み込むと胃で消化されないので、栄養失調で死んでしまう鹿も。お菓子の残りも食べると、排泄物が臭くなるし衛生的にもよくないですよね」
そんな観光客が激減した奈良公園で今、国の天然記念物として指定されている鹿の問題が深刻化されている。昨年9月には「観光客が減ったことで鹿せんべいを与えられなくなりガリガリになった」という誤情報が広まった奈良公園で話を聞いてみた。
気性が荒くなった鹿たち
栄養失調で死んでしまう鹿。理由はゴミ
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東京都出身。20代を歌舞伎町で過ごす、元キャバ嬢ライター。現在はタイと日本を往復し、夜の街やタイに住む人を取材する海外短期滞在ライターとしても活動中。アジアの日本人キャバクラに潜入就職した著書『底辺キャバ嬢、アジアでナンバー1になる』(イーストプレス)が発売中。X(旧Twitter):@ayumikawano
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