“顔面力が強すぎる”仏像のインパクト。思わず二度見、三度見してしまう
現在、上野の東京国立博物館で開催されている特別展「最澄と天台宗のすべて」(11月21日まで開催)。同展覧会には、宗教や仏教美術に興味がない人でも衝撃をうけて「一度見たら忘れられない」仏像がいくつか出展されている。展覧会の概要とともに、その衝撃的な姿をご紹介する。
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「仏像」というと、多くの人がイメージするのは半眼微笑で厳かだったり穏やかだったりする姿。しかしそれは、仏像の一部でしかない。この展覧会にも、そうした仏像はたくさん出展されているが、今回注目したいのはそれ以外の像。
まずは、愛知県の瀧山寺に祀られる「十二神将像(十二軀のうち四躯が出展)」。なかでも、2号と仮称されているものは、一目見た瞬間に思わず「何これ!?」と声に出して笑顔になってしまいそうな、個性たっぷりの見た目が特徴的だ。
顔面がボッコボコの筋肉の表現がほどこされ、表情も喜怒哀楽のどれにも当てはまらず、こちらの理解の範疇を軽く超えてくる。筆者はこの像を前にして、無意識のうちに「これヤベェ」と独り言がこぼれてしまった。
十二神将とは、薬師如来の周囲を警護する存在で、力強い武将の姿で表現されるのが通例だ。そんな中で、ほぼ唯一の像例と言っていいコミカルな印象さえ与える姿は、文字通り「目が離せない」。正面からの表情はもちろんだが、横から見ると髪型もかなりドラゴンボールが入っていてアニメから飛び出してきたようだ。
頭上に乗っているのは十二支の生き物で、十二神将は大陸の仏教の中で生まれた存在だが、日本に伝来してから十二支になぞらえて造られるようになった。
展示後半の主役とも言うべき、鎌倉時代に作られた「慈恵大師(良源)坐像」。実在した僧侶を模して造られる肖像彫刻は、生身の人間を模すので、等身大に造られるのが当然だ。しかしこの像は、2mにも迫る巨大なサイズで目の前に立つと、恐怖心さえ湧いてくるほどの迫力。
さらに、真っ黒な顔と大ぶりに象られた目鼻立ちからアフリカ由来のような異国感も漂っている。巨大でありながら実在の人物を模しているためにやけに生命感がほとばしっていて、じっと見ていると動き出すのではないかという錯覚にさえ襲われる。
東京の深大寺に祀られており、50年に一度しかその姿を拝むことができないが、今回は特別に上野で見ることができる貴重な機会だ。
平安時代に生きた慈恵大師は強い霊力を持っており、祈祷している姿を描いたお札を配ったところ、都で流行していた疫病がたちどころに収まったという逸話が残っている。そのためここ数年は「コロナ退散」を祈願する人々からも信仰を集めている存在でもある。
また、今やお寺だけではなく神社で、誰しもが引いたことのあるであろう「おみくじ」も、この慈恵大師が始めたものだと言われている。
何があった!?顔面ボッコボコの十二神将
圧倒的迫力!恐ろしささえ感じる慈恵大師像
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Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。
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