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ゴリこと照屋年之、監督業もお笑い業も「人を喜ばせたい」

 お笑いコンビ、ガレッジセールのボケとして人気を集め、今年は、15年前に終了した人気キャラクター「ゴリエ」の復活も話題を集めたゴリこと照屋年之。実は2006年以降、映画監督としても活動しており、長編2作目の『洗骨』は高い評価を受けた。  最新作となる満島ひかり主演の短編『演じる女』は、今年の「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア(SSFF&ASIA)2021」ジャパン部門ベストアクターアワードを受賞、先月も京都国際映画祭2021で上映され、好評を博した。
照屋年之

ガレッジセールのゴリこと照屋年之監督

 そんな照屋監督を単独取材。監督になった経緯や、映画制作にかける思いに始まり、実は「やりたくなかった」というゴリエ復活についても直撃。監督業にもお笑い業にも、「人を喜ばせたい」との共通した思いがあった。 【画像をすべて見る】⇒画像をタップすると次の画像が見られます

映画を監督したのは、たまたま

照屋年之――照屋監督の学歴は日本大学芸術学部、映画学科中退です。最初から監督業にも興味があったのですか? 照屋年之監督(以下、照屋監督):いや、全く(笑)。 ――映画学科に入学したのは役者をやりたくて? 照屋監督:そうです。演技コースに入りました。そこから吉本に入って、芸人をやりながらドラマや映画に出させてもらったりして。そんななか、吉本が映画に力を入れるということで、沖縄国際映画祭を作って、芸人50人に短編映画を撮らせるプロジェクトを立ち上げたんです。映画学科だった僕にも声がかかりました。「監督ってどんな感じなのかな。1回くらいやってみようかな。短編だし」くらいの気持ちで引き受けたのがきっかけです。 ――そうなんですね。もともとずっとやりたかったことに、芸人としてブレイクした後に挑戦したのかと。 照屋監督:全然。たまたま運命のめぐりあわせで入った吉本で、こうやって映画を撮らせてもらって、僕のような一握りが、ハマっちゃって今でも撮り続けているんです。もともとは自分が出たいほうだった。最初のほうの作品は自分も出てましたが、今は撮るほうに集中したいので、監督に専念してます。 ――映画作りの何にハマったのでしょう。 照屋監督:編集です。撮影は地獄です。大変過ぎて苦しい(苦笑)。脚本を書くのは楽しいですよ。自分の世界が頭から紙に移動して、みんなと共有できる。次は、それを実際に生きた役者をカメラで撮影することによって映像で共有して、最終的に、本当にこうした世界が存在するかのように作品となる。実際に赤ちゃんのように生み出せる編集が一番好きです。生まれたら可愛くてしょうがなくて、2人目の子どもが欲しい、今度は3人目! とやっていたら、今や13人の子だくさんです(笑)。

エンドロールに本当の意味を持たせた13作目

――短編を合わせて13作。ただ正直、「そんなに撮っているの?」と驚く人もいるかもしれません。 照屋監督:誰も知らないでしょ(苦笑)。短編はほとんど人の目に触れないですし。長編は2本撮らせてもらって、『洗骨』は映画マニアの人のなかでは誉めてもらったりしたので、知っている方もいると思いますが、大ヒット! となったわけでもないですし。 ――『洗骨』での日本映画監督協会新人賞(2019年度)の受賞は、芸人出身の監督としては北野武監督以来の快挙です。そして今年は、『演じる女』が「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア」のジャパン部門ベストアクターアワードを受賞。『洗骨』もですが、『演じる女』すごく良かったです。 照屋監督:ホントですか。それは嬉しいしかないですね。僕が一番欲しい栄養ドリンクは、作品が「よかった、面白かった」ですから(笑)
演じる女

『演じる女』(C)Okinawa Prefectural Government. All Rights Reserved.

――エンドロールでも感動しました。 照屋監督:あそこが本当のクライマックスですから。映画の最初から、おじいちゃんのところに妻だと言う若い女が出てきて、訳のわからないことをずっとやっている。観客に「なんだろう」「何かを企んでいそうだ」と疑問を抱かせながら、ラストに向けて「そういうことか」と引き込んでいく。そしてエンドロールでさらに「これを伝えたかったのか!」と心をつかむ。何年も前からあった構想が、満島ひかりという大女優さんと出会えたことで形になりました。 ――満島さんの終盤での1カット撮影は、いっさい目が離せませんでした。 照屋監督:主演を誰にするかずっと迷っていたんです。そんなときに、いつも一緒に撮影しているスタッフが、沖縄で満島さんとドラマを撮っていて、僕の話になったときに「出たい」と言っていたと。『洗骨』でご一緒した奥田瑛二さんが「照屋監督の作品に出られるチャンスがあったら、断るな」とおっしゃっていたそうで。僕はそれを知らなかったんですけど、満島さんが「出たい」と言っていると耳にして、社交辞令だったとしても、ちゃーんと鵜呑みにしようとオファーしたんです。見事でしたね。
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ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。X(旧Twitter):@mochi_fumi

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