ジョブ型雇用では「若者」よりも「中年」のほうが有利になる理由/猫山課長
note作家の猫山課長と申します。金融機関で課長をしながら、ネットでは働き方やキャリアに関する執筆活動を行い、ありがたいことにSNSなどで多くの反響をいただいています。
今回は「ジョブ型雇用は若者にとって地獄である」というテーマです。年功序列からジョブ型へのシフトは若者からの支持の声が大きいと感じます。
しかし、実は日本社会がジョブ型に変わることで地獄を見るのは、むしろ若者になる気がします。安直に支持すると痛い目を見そうですし、逆に中年にとっては福音かもしれません。
「ジョブ型雇用」は「職務内容に基づいて必要な人材を採用する制度」と定義されます。対して、終身雇用を前提としたこれまでの採用制度は「メンバーシップ型雇用」と言われています。
平成不況において、企業が採用を絞ったことにより就職氷河期世代が生まれました。当時は既存社員の終身雇用を守るために入口を狭めたのは明白であり、正社員たちはまさにメンバーシップの恩恵にあずかっていました。
また、現在においても、正社員であれば年功序列により無能でも勤務年数に応じて給料が支払われています。収益を生み出す生産性の高い若手社員より、日がな一日何をしているかわからないオッサンのほうが高年収である状況は珍しくないでしょう。正社員として守られ、しがみついているオッサンは勝ち組のように見えます。
「メンバーシップ型雇用は公平ではない。若手にとって不利でアンフェアな制度だ」
そんな不満が若者側から出るのは当然です。
一方、ジョブ型雇用は職務内容に適した人材をあてがう制度です。つまり、能力が低い人材は仕事から外されていきます。
「ならば、やる気のない無能なオッサンどもから仕事を奪える。給料を上げることができる」。若手がそう考えるのも無理はないでしょう。ですが、そこには危険な落とし穴が待っています。それはどんな落とし穴か?
そもそも、ジョブ型雇用は企業側にとって都合のいい制度です。人件費を最適化できるからです。
必要な仕事に適正な値札をつける。それに見合う能力を持つ人に任せる。ジョブ型雇用では当たり前の姿ですが、これってほぼ外注しているのと同じです。ジョブ型雇用では社員でありながら、下請けのようなマインドで働かなければならなくなります。
あなたが下請けであるならば、必ず競合があります。そして、あなたがもし若者なら、競合相手の多くは社内のオッサンになるでしょう。本気を出してくるオッサンに、あなたは勝てますか?
オッサンは若者よりも知識と経験がある場合がほとんどです。それに加えて老獪さがあり、人脈などを裏で活用して成果を上げることが可能です。若手がまともに競争して簡単に勝てると思うほうがおかしい。
加えて、若手が成長するには指導を受けることが必要ですが、ジョブ型雇用で年齢に関係なく競争する世界において、直接のライバルとなる若手を誰が教育するというのでしょうか? そんなマヌケがいるとは思えません。
仕事に値札がつき、年功序列と終身雇用が廃止された世界では、オッサンにとって若手を育てるインセンティブは何もありません。また、会社にしても求める実績のない若手を雇用する理由はありません。オッサンのほうが計算できますし、何より人口も多いのです。
若者は、自分達より能力と実績が高く、なおかつ人口が多いオッサン世代を相手に仕事を勝ち取っていかなければならないのです。
ジョブ型雇用の未来は、若者だけに有利になるわけではない。でも、日本はそこに向かっていくようです。
若手より無能なオッサンの給料が高い現実
無能なオッサンが若者に牙をむくとき
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金融機関勤務の現役課長、46歳。本業に勤しみながら「半径5mの見え方を変えるnote作家」として執筆活動を行い、SNSで人気に。所属先金融機関では社員初の副業許可をとりつけ、不動産投資の会社も経営している。noteの投稿以外に音声プラットフォーム「voicy」でも配信を開始。初著書『銀行マンの凄すぎる掟 ―クソ環境サバイバル術』が発売中。Xアカウント (@nekoyamamanager)
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