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住宅ローンで「ゴミ」を買う田舎モンが迎えるであろう、悲しい未来/猫山課長

【日本の99%は山手線からは見えない 第6回】

住宅の建築費は尋常じゃないほど上がっている

田舎

写真はイメージです

住宅ローンの金利は上昇基調にあるけど、ウチの金融機関の会議での報告によると、住宅ローンの実績は昨年比で悪くないらしい。金利の上昇だけではなく、建築資材だって高騰しているというのに家を建てたがるのはなぜだろう。 建築資材は本当に尋常じゃなく上がっている。私は副業でアパート経営をやっているが、先日、建築業者から「アパートを新築しないか?」との打診があった。場所も悪くないので建築費を聞いてみると、私が4年前に新築したものとほぼ同じ規模・同じ仕様で1.5倍になっていた。家賃が変わらないのにそれではまともな利益は上がらないから、丁重にお断りをした。 アパートだけではなく、戸建て住宅だって建築費は上昇している。数年前と比べて予算が同じならグレードは落ちるだろう。それなら様子見する選択もあると思うが、そんな人は少数派のようだ。 「住宅ローンはめったに焦げ付かないから、貸しまくったほうがいいのになぁ」 入社したばかりの頃、最初の上司はそう言っていた。 「住宅ローンは返済できる」、そんな神話がある。しかしこれは何の裏付けもない話だ。住宅ローンが払えない人は一定数存在しているし、自己破産を選択する人も見てきた。ただ単に焦げつく確率が低いというだけで、住宅だろうが車だろうが子供の学費だろうが、借金は借金だ。「住宅ローンだから返せる」なんて保証はどこにもない。でも、みんな住宅ローンは完済できると信じ込んでいる。

住宅購入は「投資対象」なのか?

国土交通省の「令和4年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」によれば、全国の住宅ローン新規貸出件数は平成30年度が約74万件、令和元年度が約83万件、令和2年度が77万件、そして令和3年度が約79万件と、新型コロナウイルス感染症で将来の見通しが極めて悪くなっていたにもかかわらず、人々はコロナ前と変わらず住宅ローンを借りていたことがわかる。 のちの歴史の教科書に太字で記載されるほどの厄災に巻き込まれ、これから先の見通しがまったくなくなったにもかかわらず、住宅ローンを借りる人は減らなかった。「住宅ローンは返せる」という神話がどれほど強固であるかを示すものだろう。 もちろん、住宅ローンは悪ではない。借金に善悪はなく、ただ資金を投下する対象のリターンに差があるだけだ。 住宅ローンは住居を買うための借金だから、そもそも投資した場合の「利回り」という概念と相性が悪い。アパートローンであれば、購入したアパートからの家賃と投資金額との比較から利回りが導き出せるが、住宅ローンで購入するのは自宅であり、家賃収入はないから利回りもないことになる。そもそも住宅から金銭的利益を得ようという発想自体がないだろう。 しかし、いくら利益が発生しないからとはいえ、住宅を「投資対象」として見ないのは馬鹿げている。人生で最大規模の借金をして購入したモノを「投資という概念と関係ないもの」とするのは乱暴すぎる。大きく資金をかけたからこそ、より厳しく資産として査定するのは当然のことだ。
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田舎では買った瞬間に「ゲームオーバー」
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金融機関勤務の現役課長、46歳。本業に勤しみながら「半径5mの見え方を変えるnote作家」として執筆活動を行い、SNSで人気に。所属先金融機関では社員初の副業許可をとりつけ、不動産投資の会社も経営している。noteの投稿以外に音声プラットフォーム「voicy」でも配信を開始。初著書『銀行マンの凄すぎる掟 ―クソ環境サバイバル術』が発売中。Xアカウント (@nekoyamamanager

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