「転職弱者」のシニア営業職。それでも採用を勝ちとる猛者の転職術とは
人生100年時代。「人生最後の職場を探そう」と、シニア転職に挑む50、60代が増えている。しかし、支援の現場ではシニア転職の成功事例だけでなく、失敗事例も目にする。シニア専門転職支援会社「シニアジョブ」代表の中島康恵氏が、シニア転職現場のリアルを紹介する。
今回は、シニアの転職では専門職に比べて不利となりやすい営業職などホワイトカラー向けに、シニア営業職でも転職に成功した事例と、その転職成功のポイントをご紹介しよう。
働くシニアが増えている。総務省が9月に発表した2021年の65〜69歳の就業率が5割を超えていたことは記憶に新しい。
採用する会社側も、人材不足の深刻さが増していることもあるのだろう、一昔前に比べて積極的にシニアを採用するようになった。私がシニアの転職支援事業を始めた2016年当初は、営業電話をかけても人材の年齢だけで門前払いが少なくなかったが、今では当時の会社が逆にシニア人材の紹介を依頼してくるほどだ。
とはいえ、引く手あまたのシニア人材は、実はそう多くない。
若手と違って「これから育てる」という対象でない以上、シニア人材に求められるのは「即戦力」だ。つまり、選考評価で「人間性」や「成長意欲」などが加味される割合は極小さく、求人企業に具体的に貢献できる経験スキルがない場合には、序盤で落とされてしまうのだ。
そのため、シニアの転職・再就職では、具体的な経験スキルを示しやすい専門職、技術職、有資格者などが圧倒的に強い一方で、総合職、一般職、ホワイトカラーなどは苦戦しやすい。「営業職」を例に挙げると、転職先でも「すぐに、確実に売れるスキルが自分にはある」と選考で証明するのは難しく、会社側も採用に慎重となる。
しかし、そうした厳しい転職市場でも転職に成功し、活躍しているシニア営業職もいる。今回はシニア営業職の転職事例から、シニア営業が転職を有利に進めるためのヒントをご紹介しよう。
65歳の営業職が転職に成功した事例がある。戸建てを中心とした新築、リフォームなどを手掛ける工務店の営業職をしていたAさんだ。
仕事に関連した資格は特段持っていない。工務店やハウスメーカーの営業職の中には宅地建物取引士(宅建)や建築士の資格を持っている人材もいるが、Aさんはそうした「強み」を持たなかった。
では、この65歳の営業人材が転職に成功した理由はどこにあったのだろうか? なにかしら営業力をアピールできる要素があったのだろうか?
結論として、Aさんの「強み」となり、応募先に評価された大きな要素は、他の人材よりも営業力が高いとかではない。資格はないものの、やはり業界の「専門知識」が評価されての採用だったのだ。
例えば、これまでの仕事には「地鎮祭の準備」などがあったそうだ。工事を行う前にその土地を守る神様に安全祈願する地鎮祭の知識は、もちろん一般人にはなく、神主か建築会社などでなければ持っていない。
地鎮祭の準備は工務店のメインの仕事ではない。むしろメイン業務ではない補助業務や教育業務などをシニア人材が担当し、主力メンバーをなるべく利益に直結する営業仕事に集中させて効率を高めたかったりする。その戦略に、シニア人材が持つ長年の知識とスキルがピタリとはまったのだ。
もちろん営業の場面でも、技術的な知識や法律の知識が必要になる場面も少なくない。やはり業界の経験年数が長い人材は重宝されやすい。戸建て住宅を受注する場面などであれば、自身が施主になったことがなさそうな若手人材よりも、シニア人材の方が言葉に重みが出ることもあるだろう。
このように、専門性をアピールしにくい営業職のシニアでも、長年の業界知識とスキルが評価されて採用に結びつくことは少なくない。結果を出せる根拠を示しにくい営業力をアピールするよりも、転職先を同じ業界内に絞り、業界経験・業界知識をアピールしたほうがシニア営業職は評価されやすくオススメだ。
需要の高い「専門職シニア」と転職が厳しい「ホワイトカラーシニア」
資格のないシニア営業職が採用された“決め手”とは?
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50代以上のシニアに特化した転職支援を提供する「シニアジョブ」代表取締役。大学在学中に仲間を募り、シニアジョブの前身となる会社を設立。2014年8月、シニアジョブ設立。当初はIT会社を設立したが、シニア転職の難しさを目の当たりにし、シニアの支援をライフワークとすることを誓う。シニアの転職・キャリアプラン、シニア採用等のテーマで連載・寄稿中
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