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タモリの「新しい戦前」発言にネットで反響。良識派タレントと神格化する危うさ

タモリの「新しい戦前」発言に反響

タモリ

イラスト/ズズズ

 昨年12月28日放送の『徹子の部屋』(テレビ朝日)に出演したタモリの発言が波紋を広げています。  黒柳徹子から「来年(2023年)はどんな年になるでしょう」と訊かれると、少し間をおいて「新しい戦前になるんじゃないでしょうか」と答えたのです。  ネットは大いにざわつきました。岸田総理が打ち出した防衛費の増額や敵基地攻撃能力をめぐる議論を引き合いに出し、戦争に前のめりになっている日本を危惧しているのではないかとの意見が相次いだのです。  タレントのラサール石井氏も『日刊ゲンダイ』の連載で、日本は平和国家として「永遠の戦後」を続けるべきだと持論を展開しました。「新しい戦前」への恐怖は、この石井氏の主張に集約されていると言っても過言ではないでしょう。

発言の真意はわからないが……

 とはいえ、タモリの真意は定かではありません。目下の国際情勢は日本の事情だけを切り取って語れるようなものではありませんし、実際、米中の競争は激しさを増し、ドイツやフィンランドなどのヨーロッパ各国も“臨戦態勢”の緊張が高まっています。昨年来、北朝鮮は何発のミサイルを発射したでしょう?  日本の状況もこうした関係性の中でとらえるべきことであり、世界全体が不穏な時代に突入しつつある象徴として“戦前”と表現したのではないか。一応そう考える方が自然なのですね。日本だけがいきり立っているわけではないからです。  それなのにタモリの発言はひとつの思想に閉じ込められてしまいました。今回に限らず、ここ数年でタモリの言動は“良識派の鑑”として崇められるようになってしまったのです。
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「神格化」されてしまったタモリ
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音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

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