イニエスタの獲得は失敗だったのか。“残念な結末”に潜むヴィッセル神戸の過ち
2023年5月25日、ヴィッセル神戸は元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタの退団を発表。2018年の夏に入団してから5年目を迎えた今シーズンは出場機会が激減。双方合意のもとシーズン途中での契約解除が決まり、イニエスタの最終戦は7月1日のコンサドーレ札幌戦になることが決定した。
そのラストマッチに先立って、6月6日には国立競技場でヴィッセル神戸対FCバルセロナの親善試合が行われ、イニエスタは東京圏のファンに別れを告げる試合に出場した。
イニエスタはFCバルセロナの下部組織で育ち、数々のタイトル獲得に貢献した同クラブのレジェンドである。そのイニエスタを迎えて「バルサ化」と称して華麗なパスサッカーを目指す宣言をしたヴィッセル神戸だが、5年でその目標をあきらめてイニエスタとの決別を決意した。
「バルサ化」という目標には単に戦術面だけでなく、フィロソフィーや優れた育成機関など組織として手本にしようと試みたと考えられる。しかし、5年も経過すればその戦術は古くなり絶対的な強さも失墜。さらには、経営難や人種差別などさまざまな問題が露呈し、5年の間に目指すべきクラブなのかという疑問符がついたのは間違いないだろう。
それでも、シーズン最終戦を終えた2日後にクラブレジェンドのためにベストメンバーをそろえて来日するという強行日程を決行した行為は、イニエスタに対する最上級のリスペクトを感じさせた。また、イニエスタも滞在24時間という弾丸日程に感謝の気持ちを伝えていた。
イニエスタは5年の間に多くのものを残してくれた。サッカー選手としても、ひとりの人間としても常に素晴らしい振る舞いを見せ、良き手本となり多くの子どもたちの目標となった。もちろん、Jリーグの集客や露出にも大きな影響を与え、日本サッカーの発展に寄与してくれた。加えて、日本文化の海外発信にも貢献し、サッカー界だけでなく日本の社会にも影響を及ぼす存在だった。
そんなイニエスタはチーム内でも大きな影響力を持っていたことは想像に難くない。その証拠のひとつとして、イニエスタは来日してからバルセロナ時代にはあまり見られなかった動作を試合中に繰り返すようになった。
イニエスタとの決別は「バルサ化」との決別
イニエスタが残したもの
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スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる
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