歌舞伎町「交縁」界隈に日本人女性が集うワケ。春を売る理由は必ずしも“貧困”ではない
2022年頃から新宿歌舞伎町のハイジア・大久保公園外周に10代後半〜20代前半の若い日本人女性の街娼(立ちんぼ)が急増。公園と援交を掛け合わせた「交縁」(こうえん)という言葉がSNSを中心に広がり、ちょっとした社会現象になっている。
日本人女性を求める買春男性はもちろん、その様子を配信しようとするYouTuberや動画配信者も出現。巡回する警察官との間で小競り合いが起きるなど、まさにカオスと呼べる状況だが、それを見物しようとするギャラリーまで集まってくる始末……。
ルポ 新宿歌舞伎町 路上売春』(鉄人社)の著者であるノンフィクションライターの高木瑞穂氏に話を聞いた。(記事は全2回の1回目)
——ルポライターとしてさまざまな事件取材などもされている高木さんですが、まずは本書の執筆背景から教えてください。
高木:じつは大久保公園の話題が盛り上がる2022年以前から担当の編集者さんからお話をいただいていました。当初は東京という広い括りで街娼を取材する、というかたちで検討していたのですが、エリアを絞ったほうがわかりやすいと思い、“交縁界隈”にスポットを当てました。
——約1年間にわたって密着取材を敢行したとうかがいました。
高木:執筆期間まで含めると約2年ぐらいかかりましたね。想像していた以上に大変でした。街娼へのインタビュー自体は、雑誌の企画などで、これまで散々やってきました。ただ、今回は単に街娼になった理由を聞くだけではなく、もっと深く掘り下げたいと思ったんです。
そのためには長期で密着する必要がありました。しかし、思いのほか取材の交渉が難しかった。もともと知り合いだった子もいますが、次回の取材のアポを取ってもすっぽかされたり、LINEが既読にならないなんてことはザラで……。途中で「やっぱりやめたい」と言われることも多かったです。相手にとっては、長期で取材を受けることに、わかりやすいメリットがないんですよね。
——街中で声をかけて交渉することが多かったようですが、あらかじめ恣意的に選んだ取材対象者ではないぶん、よりリアルな声とも言えるかもしれませんね。
高木:私としても街娼たちの長期の密着は初めてでしたし、“人としてきちんと付き合えた”と感じています。最終的に出来上がった本を渡したときも「ありがとう」と喜んでもらえて。
——彼女の感謝の言葉には、どんな思いが背景にあるんでしょうか?
高木:その子からは「私の人生を書き残してくれた」と。街娼といえば、一般的には“貧困”が背景にあると思われている。それがメディアでもウケやすい。そういうイメージとして自分を利用するのではなく、ありのままに自分を書いてくれてありがとう、みたいに言っていました。
まあ実際は、彼女たちの負の部分も含めて、素直に思ったことを書いただけなんですけどね。私自身も少なからず貧困の話が出てくると思っていたんですけど、「みんなこんなにいい暮らしをしているんだ」と驚きました。今回の取材に関していえば、貧困はほぼありませんでしたね。風俗や出会いカフェの仲間から「効率良く稼げるよ」って交縁界隈の存在を教えてもらって、という流れが多かった。
——正直、一般的な性風俗店では働けなくなった女性が、仕方なく路上で客を引くものだと思っていたので、若い女性が「効率良く稼げる」という理由で街娼を始めるのは驚きです……。
そんななかで、彼女たちはなぜ、さまざまなリスクを冒してまで、わざわざ公園で客を引くのだろうか?
当事者たちへの取材から、この不可解な現象の真相に迫った『新宿歌舞伎町の“交縁”界隈を長期にわたって密着取材
春を売る理由は、必ずしも“貧困”というわけではない
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1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii
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『ルポ 新宿歌舞伎町 路上売春』 ベストセラーノンフィクション『売春島』の著者・高木瑞穂が、新宿歌舞伎町のハイジア・大久保公園外周、通称「交縁」(こうえん)の立ちんぼに約1年の密着取材を敢行。路上売春の“現在地”をあぶり出すとともに、彼女たちそれぞれの「事情」と「深い闇」を追った――。 |
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