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歌舞伎町「交縁」界隈に日本人女性が集うワケ。春を売る理由は必ずしも“貧困”ではない

「無いはずのお金を使わせる」ホストクラブの売掛が抱える問題

伝票

ホストクラブの伝票(提供写真)

——ホストクラブでの売掛金をきっかけに街娼を始める“ホス狂い”の子も多いと聞きました。 高木:メンズコンカフェやメンズ地下アイドルなども含めると、大久保病院側にいる10代後半から20代ぐらいの子たちは、ほとんどがそのパターンですね。  あと、街娼という行為は特異に見えますが、“推し”文化から辿ると、彼女たちが路上に立つ理由としては、今も昔もあまり変わっていなくて。以前からビジュアル系バンドや男性アイドルの追っかけ資金のため、風俗や出会いカフェでカラダを売る子が多かったので。 ——もちろん、お金の使い方は自由なんですが、そういった話を聞くたび「一部でも貯金や投資に充てればいいのに」と思わずにはいられないです……。 高木:ホストの売掛でケツを叩かれないと働けない(働く気が起きない)子がいるというのも事実ですね。ただ、ホストクラブの値段に関してはビールが一杯3000円だろうと、そこに価値があると思うのならば構わないんですが、無いはずのお金を使わせる「売掛」というシステムについては問題があると思っています。  これは、返済能力のない子に対する強引な借金で、闇金と同じ手口です。現状、ホス狂いたちは、ある意味それを受け入れているわけですが、ホストを取り上げるメディア側も考える必要があるはず。たとえば、テレビで芸能人が軽々しく「ハマりそう」なんて言いますけど、その人はハマっても問題ないくらいお金があるのでしょうが、普通の女の子はそうじゃないので。

発達障害や愛着障害を抱えている子も…

高木:今回の取材で改めて実感したことがあります。これはセックスワーカー全般で前々から思っていたことなのですが、何かしらの精神疾患や発達障害、愛着障害を抱えている子が少なくないということです。 ——セックスワーカーに対する偏見や差別にもつながる可能性があるため、今までタブー視されてきた部分がありますよね。発達障害や愛着障害の認知が広がったのも最近と言えます。 高木:私も今回の取材で初めて愛着障害の子に出会いました。忘れものを取りに帰るみたいなことを繰り返して学校や会社に遅刻してしまったり、休んでしまったり。  そうした問題を抱えていて、手に職もない女性が「お金を稼げる仕事」として風俗や売春がある。収入や生活力という観点で言えば、自由な時間にできる街娼で「救われている」と語る子も多いんです。 ——現在のホストの売掛問題などに手を打ち、福祉につなげていくことが大切なのでしょうか。 高木:彼女たちが望んでいるのならば福祉につなげることも大切かもしれませんが、僕が取材してきた街娼の多くはそれを望んでいない。街に立つ彼女たちが本当に望んでいるのは自由。それも推しにお金を貢げる自由という場合も多いわけなので。  NPO法人が行っているようなサポートは、正直、自己満足的な部分もあると思いますよ。家出少女を囲ってやめさせても、結局は抜け出しちゃう。それは、今とは違うかたちの支援のあり方を考える必要がある、ということです。多くの人にこうした問題の実態を知ってもらうことで、次のフェーズへ変わっていくといいなと思います。 <取材・文/伊藤綾>
1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii
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ルポ 新宿歌舞伎町 路上売春

ベストセラーノンフィクション『売春島』の著者・高木瑞穂が、新宿歌舞伎町のハイジア・大久保公園外周、通称「交縁」(こうえん)の立ちんぼに約1年の密着取材を敢行。路上売春の“現在地”をあぶり出すとともに、彼女たちそれぞれの「事情」と「深い闇」を追った――。
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