家を買う、リフォームする際に注意すべき食器棚のサイズ。奥行は55cm以上がマスト
今、住宅系のYouTube界隈を騒がせている男がいる。動画チャンネル『ジュータクギャング』の押村知也だ。設計から建築、インテリアコーディネイトに至るまで住宅に関するすべてをこなす住宅のスペシャリスト「住空間クリエイター」である。歯に衣着せぬ彼の発言は、わかりやすくて痛快。『ジュータクギャング』は、更新のたびに視聴者の心をつかみまくっている。
そんな押村は、「カップボードの奥行は絶対に55㎝以上」と並々ならぬこだわりを持っている。それはいったいなぜなのか? そして、いったいどんなものを選べばいいのか?
カップボードとは、キッチンにある食器棚のことである。キッチンボードとも呼ばれ、システムキッチンと一緒に並んでいるものを指すことが多い。上部に吊戸棚収納がついたタイプもあれば、カウンター型、上部に吊戸棚をつけるタイプもある。
カップボードの使い勝手を決めているポイントはどこなのか。あまり買い換えることのないキッチン家具だからこそ、事前にプロフェッショナルが持っている意見を確認しておきたいところだ。
カップボードには、家具屋で購入するパターンと、あらかじめキッチンに備えつけてあるパターンが存在する。どちらがいいのかをまず押村に聞いてみた。
「備えつけがベターです。家具屋に置いてあるカップボードは、小さいケースが多い。奥行きは45cmぐらいで、上部収納と一体型であれば高さは1m80cmから2mぐらいでしょうか。そのサイズだと、天井までに隙間が生まれ、キッチン周りのバランスが悪くなります。また、備えつけていないことで、安定感がない。多くの食器を入れるカップボードは、重さによるフラつきにも注意が必要です。壁との間にホコリがたまりやすいのも、僕としては大きなマイナス。とにかく掃除するのが大変です」
続けて押村は、備えつけパターンの注目点を力説する。
「備えつけの一番のよさは、サイズを自由に設計できるところ。これをどう設計するかで使い心地に大きな差が生まれます。例えば、電化製品を置くカウンターの幅は1m80cmぐらいのものが多いですが、できれば2m以上は欲しい。というのも、いまはキッチン関係の電化製品が多いからです。炊飯器、電子レンジ、トースター、コーヒーメーカー、電気ポッド……と、横に並べたらすぐにいっぱいになってしまいます。とくに奥行きが重要で、多くの既製品は45cmぐらいが多いと言いましたが、それよりも10cmほど広い、55cm以上を確保してください。この10cmの差で、作業のしやすさが段違いに上がります。それはなぜか? 炊飯器の前にお茶碗を置くスペースが生まれるからです。家電がジャマにならず、作業するための10cmだと思ってください」
カウンター型に吊戸棚をつける場合には注意点がある。
「世のなか、吊り戸棚がえらい高さのところについていたりするんですよ。おそらくレンジフードの高さに合わせてつくられているからだと思います。僕は1m45cmぐらいの高さでいいと考えています。女性でも手が届きやすいですから。さらに下のほうではゴミ箱のスペース。僕が新築やリフォームする場合は、カップボードと一緒に、ゴミ箱を置く場所もつくってしまいます。細かいところまで周囲とともに考えることが、家づくりにとってすごく大切だからです。その際に、ゴミ箱は引っ張り出すタイプは止めること。キッチンでゴミ箱を使いたいときは、両手がふさがっていることも多いですから。オープンスペースに置いて使えるタイプを選ぶ。フタは当然、足で踏んで開くバタフライ型がおすすめです」
カップボードの裏には、大量のホコリがたまる
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(おしむらともや)スタイラス所属。20代で建築、都市計画、インテリア、暮らしについてカナダ、アメリカで学び、輸入住宅などを手掛けるも挫折、住宅とは何かを見失う。大手ハウスメーカーや大手デベロッパーにコンサルティングして感じた「業界の嘘」と「都合の良い慣習」に納得できず、悪しき慣習にまみれた日本の住宅づくりからの逸脱が始まり、住宅業界の異端児となり、1000棟以上の建築設計を手掛ける。2022年7月にYoutubeチャンネル『ジュータクギャング』を開設。近著『美しい家のつくりかた』
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『美しい家のつくりかた』 1000軒の家を建ててわかったこと |
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