フランス大統領選の極左候補者の本が大ヒット
ビジネス本ブームの日本。己を鼓舞してくれたり疲れたココロを名言で癒してくれたり、サラリーマンのいかなる悩みも受け止める充実っぷりである。が、裏返せば、現状への不満不安の表れでは? 世界各国、ビジネス本の売れ筋を見れば、その国の経済や社会、文化が見えてくる!
【フランス】
ビジネスに必要なことは、みな、文学が教えてくれる!?
「フランスのビジネスマンは文学作品をよく読みます。ビジネス本を読んでいると『つまらないヤツ』と思われますし、営業などの仕事でも、文学の話ができなければ信頼されません。文学を読めば、『世の中のルール』が作られた過程や、それが絶対的でないこと、その裏をかく方法などを学べる。それを、想像力をもってビジネスに役立てる。そんな風潮がある気がします」
そう話すのは、パリ政治学院に招聘され、現在パリ在住の政治学者、吉田徹氏だ。では、超マイナーだというビジネス本のジャンルには、どんな本があるのか?
「中小企業や自営業者が多い産業構造も関係しているのでしょうが、技能や昇進の試験対策などの実用的なものが大多数。あと、意外に多いのは、多文化マネジメント系の本ですね。フランス経済もグローバル化し人材マネジメントに苦労しているからでしょう。こうなると、フランス人は積極的に相手の文化を知ろうとしますから」
ビジネス書ではないが、実は日本の書籍も人気で、村上春樹は圧倒的な支持を得る。そのほか、「原発事故を受け大江健三郎の『ヒロシマ・ノート』も売れていますし、谷崎潤一郎といった旧作も根強い人気」だとか。文学に学ぶフランスで、日本の作品が支持されているのは、単純にうれしいぞ!
●『2分間で説得する』
(Convaincre en moins de 2 min)
著者は邦訳書もある米国の対人関係コンサルタント。「人間関係に関する本は『いかに優位に立つか』というものがたくさん出てきました。人間関係がうまくいかないとき、フランス人は日本人と真逆で、自分が変わるのではなく相手を変えようとする。どちらが正しいかはわかりません(笑)」(吉田氏)
●『奴らをぶっ飛ばせ!』
(”Qu’ils s’en aillent tous !” Vite, la révolution citoyenne)
大統領選に出馬中の極左候補者、ジャン-リュック・メランションの著作。「『資本主義経済とグローバル化から脱せよ!』と唱える政治家の本が、ビジネス書ランキングに入っているんですよ。現在のフランスのサラリーマンや労働者が、いかに厳しい状況にあるのかを物語っていますよね」(吉田氏)
※本のタイトルは邦訳が出版されているものは邦訳のタイトルを。そうでないものは、編集部がタイトルを訳しました
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