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Aマッソ加納「汗かき放題で目の前の“欲”に忠実に」。ひとりメシの醍醐味を語る

コロナ禍による「個食」の普及や漫画・ドラマ『孤独のグルメ』のブームも手伝って、「ひとりメシ」はもはや寂しいものではなく一般的なもの、あるいは「自分の欲求を満たせる贅沢な時間」になりつつある。では、多くの人を魅了してやまない「ひとりメシ」の魅力とは? 「ひとりメシ」が大好きだという人気お笑い芸人――3年連続で「女芸人No.1決定戦 The W」のファイナリストにして、小説家やドラマの脚本を手掛けるなど、多彩な才能で活躍の幅を広げているAマッソ・加納愛子さんに話を聞いた。

私にとっての「ひとりメシ」は「わがままメシ」と同じ

加納愛子(以下、加納):お笑い芸人でありYouTuberでもあるフワちゃんとは、彼女がブレイクする前から仲がよくて、今でもジョギングの流れからご飯によく行きます。世間話から芸能界の噂話まで色々と話しますが、店内だと週刊誌の記者がどこに潜んでいるかわからないし、隣の人がファンの可能性があるので芸能系の噂話にはまず触れないです。外でも警戒心は緩めません。芸能ゴシップの話題になったら周囲に私たちの話し言葉がノイズに聞こえるくらい、ジョギングのスピードのギアを数段階上げちゃいます。フワちゃんはめちゃ速いから付いていくのがやっと(笑)。直近だと、同じ番組で共演していた3時のヒロインの福田麻貴とラランドのサーヤ。彼女たちとは2日前にご飯に行ったばかりです。オンナ3人だからといって恋愛とかの女子トークは一切なく、相方の愚痴をメインとした井戸端会議な感じ。どうしても隣の芝生は青く見えちゃいます(笑)。 普段から芸人の先輩や後輩とご飯に行く機会の多い加納さん。大人数で食べるご飯が楽しい時間だと感じるのも、その対極にある「ひとりメシ」があってこそ。 加納:疲れていて人に会うのも億劫。でも、外で好きなご飯を食べたいという衝動に駆られたら「ひとりメシ」です。だから私にとっての「ひとりメシ」は「わがままメシ」と同じ。「お店どうする?」「終電、大丈夫?」「本当は後輩たち、帰りたいのでは?」といった気を使う煩わしさがないのもいい。私自身は職業柄、喫茶店やファミレスに1日中ひとり籠ってネタを考えたりしているので、「ひとりメシ」自体に抵抗はまったくないですし、周りがガヤガヤしているところにポツンとひとりでも、疎外感や孤独感を覚えることもありません。煙もくもく系の焼肉やホルモン屋だって平気にひとりで行けちゃいます。ただ、お店選びは難しい。創業何十年だからきっと地元民から愛されていると勝手に期待して入っても、ただ古いだけで、私の舌との相性が悪いお店は腐るほどある。こればかりは足で稼ぐしかないかなと思っています。

汗ダラダラでも拭かない。メイク崩れの顔だって気にしない!

相性のいい「ひとりメシ」店は自分の足で稼ぐしかない

期待を裏切られながらもストックを積み重ねてきた中で、一押し中の一押しと加納さんが我々を案内してくれたのが、肉屋直営の「焼肉ホルモン 龍の巣 新宿三丁目」だ。オレンジ色の明かりが煌々と灯った昭和の風情が残る外観は、つい店内を覗き見したくなる。 加納:深夜寄席で二つ目の落語家の噺が500円で聴けるので、コロナ前は、毎週金曜日の夜になると新宿末廣亭に落語を聴きに通っていました。その帰りにかすうどんが無性に食べたくなって見つけたのがここ、「龍の巣」。特に「かす(牛ホルモンから脂を搾ったもの)」は、かりかりとぷよぷよの食感が口の中に交互に訪れて、脂の甘みがじゅわっと広がっていく。大阪のなんばでも、かすうどんはよく食べていましたが、本場大阪よりこちらのほうが個人的には好みの味かな。また「ひとりメシ」のときは、ピリ辛の赤かすうどんもよく注文するんですが、私は汗かきなので物凄く汗をかく。後輩や芸人仲間などにメイク崩れの顔を見られるのはめっちゃ恥ずかしいけど、ひとりならその心配もない。好きに汗かき放題だから、一回も拭かなくたっていい。他にも、口の中が丸見えになるくらい大口でハンバーガー食べる姿とか、フライドチキンが前歯の隙間に詰まった姿とか、女性にとって恥ずかしいビジュアルを臆面もなくさらけ出し、目の前の“欲”に忠実になれるのは「ひとりメシ」の醍醐味ですよね。

この煙がホルモンの醍醐味。オリジナルのタレに付け込んだお店の名物は、メニュー名もダイレクトに「名物ホルモン」

また最近の「ひとりメシ」時に、面白い出来事もあったとか。 加納:私が頻繁に訪れる原宿にあるスープカレーのお店で、食後のアイスコーヒーのカップが1.5倍の大きさになっていたんです。量ももちろん1.5倍。店員さんいわく「店内が混雑し過ぎていてアイスコーヒー用のグラスが足りず、コーヒーの量が多くなってしまって。ご迷惑をおかけして申し訳ございません」って。私からしたら、えっ、どの辺が迷惑!? いいに決まっているやん。なんで、なんで東京では、量が多くなって謝るの?大阪だったら謝らんのちゃうかな(笑)。なんか文化の違いに触れられた気がしました。
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飲み屋街の店先は危険で溢れている
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