90代の親を介護する60代「老老介護で働けないシニア」の苦しすぎる仕事探し事情
人生100年時代。「人生最後の職場を探そう」と、シニア転職に挑む50、60代が増えている。しかし、支援の現場ではシニア転職の成功事例だけでなく、失敗事例も目にする。シニア専門転職支援会社が、今回はシニアがさらに就職難に追い込まれる背景を解説する。
シニア求職者本人の健康やスキルだけでなく、本人を取り巻く家庭や家族の環境が原因で働けないシニアもいる。親や配偶者などの“老老介護”が負担となっているシニアも。どんな制限が出てしまい、どうすれば両立できる環境に近づけるのかを紹介する。
働くシニアの人口も増え、定年や再雇用の年齢上限も上がってきた。しかし、シニアと呼ばれる年代に近づくにつれ、転職・再就職の難易度は徐々に上がる現実は依然としてある。
通常よりも就業のハードルが高いシニアで多いのは、スキルや職務経験が少ない方、相場感に合わない給与や待遇を求めている方、あとは病気など健康上の理由を抱えた方だ。シニアともなると健康や体力の課題はどうしても増すため、立ち仕事や体力を要する仕事が難しくなるケースは多い。
ただ、こうした本人の都合や状況だけでなく、別の要因で就ける仕事が制限されてしまうことがある。家庭・家族に起因するものがそうだ。今回は、家庭の事情で仕事に就きにくいシニアの実情に迫る。
シニアの場合、仕事が制限される家庭・家族の事情の筆頭となるのは、やはり介護だ。介護の問題以外では、子供や孫の世話が挙げられることが比較的多い。稀に配偶者などが生活スタイルの面で仕事に制限を設ける場合もある。
「ヤングケアラー」という言葉もあるように、家族の介護で仕事に影響が出るのは、なにもシニアに限ったことではないが、若い世代では育児による影響の比率も大きいことを考えると、介護はよりシニアに対する影響が大きい問題といえる。
介護の対象は、親、配偶者、兄弟などが多いが、障害を持った子供のケースもある。「老老介護」の問題が以前から叫ばれているが、実際に90代などの親を介護する60・70代のシニアワーカーも珍しくない。
では、介護などなんらかの家庭の事情を抱えたシニアワーカーは、仕事のどのような部分がネックとなりやすいのだろうか。
やはり、一番ネックとなりやすく、制限がかかるのは労働時間だ。長時間の労働が難しい、あるいは特定の時間しか働けないといった制限が出てきやすい。介護を抱えていると、要介護認定区分など被介護者の状況やほかの家族の存在、利用している介護サービスの状況にも左右されるからだ。
多いケースとしては「残業ができない」「午前のみ・午後のみを含めて数時間しか働けない」といったものがある。また、看護や介護、工場や飲食店など、夜勤がある職種を受けたとしても「夜勤NG」という希望を出さざるを得ない方もいるし、土日・祝日のシフトが求められる職種では、それにも合わせづらい。
時間と関連するが、通勤時間や家族になにかあった時の対応の問題から、通勤エリアにも制限が発生する。特別な事情がない人でも片道30分を超える通勤は避けたいだろうが、介護などの事情があるならばなおさら30分圏内は必須条件で、片道15分という希望も多い。
働きたくても「本人以外の理由」で働けないシニアも多い
働きながら“老老介護”する現実も
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50代以上のシニアに特化した転職支援を提供する「シニアジョブ」代表取締役。大学在学中に仲間を募り、シニアジョブの前身となる会社を設立。2014年8月、シニアジョブ設立。当初はIT会社を設立したが、シニア転職の難しさを目の当たりにし、シニアの支援をライフワークとすることを誓う。シニアの転職・キャリアプラン、シニア採用等のテーマで連載・寄稿中
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