更新日:2024年04月04日 14:53
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“観る将”芸人が力説「藤井聡太は何がすごいか?」。デビューからの記録を振り返る

前人未到の将棋8大タイトルを独占する藤井聡太八冠。改めて何がすごいか――“芸人界初の観る将”を自認する、ランパンプス寺内ゆうきが、将棋のルールを知らない人でもわかる「藤井聡太のすごさ」について解説する。

八冠制覇という快挙

ランパンプス寺内ゆうき

ランパンプス寺内ゆうき

 現在、およそ170人の現役棋士が全員、タイトルを目指して毎日しのぎを削っています。  多くの棋士にとってまず、タイトル戦に「挑戦」することが大きな壁です。タイトル戦に挑戦するということは、タイトルホルダー以外の全員を倒したということなんです。それだけでもすごいことです。だって年間8人しかいませんから。  そして挑戦権を獲得したら、やっとタイトル戦です。普段は将棋会館で行われている対局ですが、タイトル戦は違います。日本各地のホテルや旅館、お寺などが対局場となります。また前日には、使用する駒や、対局場の空調・照明の確認などをする検分という作業や、主催企業や将棋ファンとの前夜祭が行われます。もう普段の対局とは全然勝手が違うんですよね。  そんな異質な雰囲気で行われるタイトル戦で、すでに君臨しているタイトルホルダーを倒すことができれば初めてタイトル獲得です。将棋連盟ができてこれまで340人の棋士がいました。その中でタイトルに挑戦したことがある棋士は78人です。つまり23%の棋士しかタイトル戦を経験したことがないということです。そしてタイトルを獲得したのは45人。たった13%です。  ただでさえなるのが難しい棋士という職業の中の13%しか獲ることができないタイトル。どれだけすごいことかわかりましたかね? すごいですよね?  それを藤井聡太さんは8種類全部獲っちゃったんです。同時に。コンプリートっす。前人未到の史上初です。すごすぎます。  初タイトル挑戦は2019〜2020年に行われた第91期棋聖戦。藤井聡太さんが17歳の時です。当時三冠の渡辺明棋聖(三冠だって相当すごいです。今までに10人しかいません)に挑戦し、3勝1敗で奪取します。  17歳と言ったら、僕は部活終わりにコンビニでガリガリくんを貪り食べてた扶養家族の頃です。その17歳が家から離れた旅館で、前夜祭に大人たちに囲まれながら挨拶して、インタビューに答えて、写真撮影なんかもしたりして、次の日には歳が20も離れた三冠王と対局するんです。これだけでも快挙。しかも勝っちゃうんだから。  そこから王位戦、叡王戦、竜王戦、王将戦、棋王戦、名人戦、王座戦と一度も失陥することなく、21歳の時に八冠を達成しました。初タイトルから3年間、8回の奪取と10回の防衛。負けなしです。  もう僕は怖いんですけど、これからずっと藤井八冠が勝ち続けちゃうんじゃないかって思っちゃう時があります。絶対そんなわけはないんです。きっといつか八冠の牙城を崩す棋士が現れ、素晴らしい対局を見せてくれるでしょう。  ちなみにまだ7つしかタイトルがなかった頃に羽生善治九段が達成した七冠ですが、その七冠保持期間は167日でした。羽生善治九段ですら全冠制覇していた時期はおよそ半年だけだったんです。藤井八冠はどれだけ続くのか楽しみです。

小学生でプロに勝る終盤力

 将棋が強くなるための方法としてよく挙げられるのが「詰将棋」です。  詰将棋とは相手玉(相手の王将のこと)をもう絶対に逃げられない「詰み」という状態にする将棋のパズルのようなものです。なので将棋の“終盤力”を鍛える練習にはとてもいい方法なんです。  1回動かして詰みになるものを一手詰、3回動かして詰みになるものを三手詰といいます。必ず奇数です。なぜなら偶数は相手の手番ですからね。  アマチュアなら五手詰でもスムーズにできれば相当強いです。が、棋士は平気で十三手詰や十五手詰を解きます。  そしてその“詰将棋力”を競う大会があります。それが「詰将棋解答選手権」です。  この詰将棋解答選手権は初級戦、一般戦、チャンピオン戦の3段階にクラス分けされています。中でも最難関のチャンピオン戦は、詰将棋好きがプロアマ問わず、10問の詰将棋を180分で何問解けるかという超ストイックな大会です。難易度設定は参加者が全員解けそうな問題から、正解者が1人出ればいいだろうという超難問まで。  そんな詰将棋解答選手権に彗星の如く現れたのが藤井聡太少年。2015年に、なんと小学6年生で全問正解して単独優勝してしまったのです。当然、将棋界では大きな話題になりました。  参加者には過去6回の優勝を誇る詰将棋の名手「スーパーあつしくん」こと宮田淳史六段など棋士も数多く参加していました。その錚々たるメンバーを薙ぎ倒して小学生が優勝しちゃったんです。つまり当時からプロをも凌ぐ終盤力があったと言えます。  まあ、なんかのまぐれで優勝することもあるからね。そう思ってる方もいるかもしれませんが、ここからが藤井聡太さんの怖いところ。そこから5連覇しちゃいます。5連覇。もう誰も寄せ付けません。  そしてコロナ禍の影響で開催が見送られていたチャンピオン戦が2024年の3月、5年ぶりに開催されました。空白の5年の間に八冠となった藤井聡太さんの6連覇が期待されましたが、残念ながらご多忙のため不参加でした。今回優勝したのは古賀悠聖六段。新チャンピオンとなった終盤力を武器に、これからの活躍を期待してしまいます。
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軌跡の全てが最年少記録
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吉本興業所属芸歴13年目のお笑い芸人。「小中高の教員免許」「保育士資格」「将棋文化検定2級」等様々な資格を取得。楽屋で先輩に誘われた将棋でボロ負けしたことをきっかけに将棋の勉強を始める。まずは将棋を指すことに没頭したが、次第にプロの将棋を観戦するようになる。「観る将」という言葉が現れる前からの観る将棋ファンであるため、“芸人界初の観る将”を自負している。年間のプロの将棋観戦は1000局以上。吉本興業に将棋部を立ち上げ、関東将棋ブ!の部長を務めている。またYouTubeチャンネル「よしもと将棋芸人と金チャンネル」を開設

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