2024年春ドラマ「注目3女優の主演作」を爆速レビュー。今田美桜、生見愛瑠、広瀬アリス
春ドラマが始まった。その中から注目の3人の女優が主演する3作品を爆速レビューしたい。
(日本テレビ 土曜午後9時)
「土ドラ9」の第1弾。一家揃ってテレビを観る機会の多い時間帯なので、それに相応しい令和版『水戸黄門』が用意された。今田美桜(27)が扮する怖い物知らずの主人公・花咲舞が、メガバンク内の悪党を斬り捨てる。
杏(37)の主演で2014年と翌15年にドラマ化された作品のリメイクであるものの、10年が過ぎているので既視感は薄い。今田版の舞は正義感とクソ度胸が杏版と一緒であるものの、悪党を圧倒する目力と敏捷性が加わった。リメイクまでの間に進んだ時代に合わせ、男女対等がより強調されている。
相馬健(山本耕史)と舞は本部臨店班に所属する。本来は支店の事務ミスを正す程度の部署なのだが、その過程で大きな不正が見つかると、舞は黙っていられない。
第1回では相馬と2人で古巣の羽田支店に臨店に入り、支店長の藤枝(迫田孝也)が2億円の不正融資の見返りに賄賂を受け取った事実を知る。
相馬はデキる男なのだが、臭い物には蓋をするタイプ。藤枝の不正追及にも逃げ腰だったものの、舞の気迫に押され、やむなく動く。山本はぼんくらを装う切れ者に扮するのが実にうまい。
舞は賄賂の振込依頼書を手に入れ、藤枝に突き付けた。動かぬ証拠であり、『水戸黄門』なら印籠である。舞はちょっとドヤ顔だった。今田の勝ち気そうなキャラクターがハマった。
「2億の融資をした見返りじゃないんですか?」(舞)
だが、藤枝は観念しない。不正を告発した女性行員・根津(栗山千明)に対し、「だから女は信用できないんだよ。オレの人生を台なしにするつもりか」と逆ギレした。ここで舞は声を張り上げる。観る側がカタルシスを得られるシーンを迎える。
「お言葉を返すようですが、不正を行って、ご自分の人生を台なしにしたのはご自身ですよね?」(舞)
藤枝は「うるさい、黙れ」と言い返すが、舞は止まらない。
「支店長は女性行員を見下しています!」(舞)
女性蔑視が行内の体質であるのなら、「腐っている!」と断じた。この言葉に支店内から拍手が沸き起こる。爽快だった。
企業によってはいまだに女性社員を格下扱いしている。綺麗事を言うつもりはないが、それは自滅への道に違いない。世界に類を見ない少子高齢化の中、女性が活躍する場を広げなかったら、先はない。
今田版は杏版と同じく痛快なエンタテインメントであるものの、働く人たちへのメッセージ色が濃い。
●今田美桜『花咲舞が黙ってない』
働く人へ向けた痛快エンターテインメント
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員
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