意外と“狭き門”「教習所の教官」になる試験は誰が審査するのか?合格には「かなりの時間と労力が必要」
クルマの免許を取るために通うのが自動車教習所です。しかし、そこで働く教官は謎が多い職種のひとつ。特に多い質問が、「どうすれば教官になれるんですか?」というもの。結論から言えば、国家資格「指定自動車教習所指導員」を取得すれば教官になれます。
そこで今回は、教官として勤務した経験がある筆者が、指定自動車教習所指導員(以下、教官)について解説。試験にはどんな問題が出るのか、教官として勤務するまでにどんな流れなのかを紹介しましょう。
教官になるための試験に合格するには、以下の10科目の審査(試験)を受けなければなりません。しかも、ほぼすべての科目で85点以上(一部は95点以上)でなければ不合格になってしまうという、なかなかの難易度なのです。具体的に見ていきましょう。
【筆記】
1.交通の教則(正誤式)
○または×で回答する正誤式の問題
2.安全運転の知識(論文)
クルマを運転する上で必要な、安全運転の基礎的な知識を問う科目
3.道路交通法(論文)
道路交通法と関係法令を正しく習得しているかを問う科目
4.教育知識(論文)
人を指導する上で必要な知識を問う科目。心理学的な内容が含まれる。
5.教習所に関する法令(論文)
道路交通法の中で「指定自動車教習所」に関する法令を問う科目
6.自動車の構造等
自動車の基本的な構造と仕組みなどを問う科目
【技能】
7.運転技能(所定コース内)
運転免許試験場内の教習コースを正しく走行または指導できるかを問う実技科目
8.運転技能(公道)
一般車両が行き交う公道で正しく走行または指導できるかを問う実技科目
【面接】
9.技能教習について
技能教習についてどう考えているかを問う
10.学科教習について
学科教習についてどう考えているかを問う
※数字は受験する順番ではありません。
「交通の教則」は、免許を取ったことがある人なら、なじみのある問題だと思います。教習所を卒業したのち、運転免許試験場で○または×で回答する正誤式の問題を覚えていませんか。教官になるわけですから、満点が当たり前と思われがちですが、ひっかけ問題が頻発すると、思わず間違ってしまうことも。注意が必要な科目のひとつです。
「道路交通法」は10科目の中でもっともボリュームが多く、道路交通法の中身をしっかりと理解しつつ、内容を正しく説明できるかどうかを問われます。一度でも法律を勉強したことがあればコツをつかめるかもしれませんが、法律独特の条文などに慣れるまで時間がかかってしまうのも事実。第○条と言われればすぐに何が書いてあるか説明できるようにならなければなりません。
「教育知識」は、人を指導する上で必要な知識が問われます。教官は人と接する仕事であるということを強く認識させられる科目でもあります。自分の運転がうまいだけではダメ。そのため、狭い車内でうまくコミュニケーションをとるにはどうすればいいか、心理学なども学びます。
合格には10科目すべてで85点以上
「道路交通法」に加え、心理学も学ぶ
自動車ライター。出版社の記者・編集者を経て、指定自動車教習所の指導員として約10年間勤務。その後、自動車ライターとして独立し、コラムや試乗記、クルマメーカーのテキスト監修、SNS運用などを手がける。
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