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“退職金3000万円”で早期退職した55歳男性の悲しい末路。念願のキッチンカーを始めるつもりが「熟年離婚」の危機に…

 健康寿命が伸びている今、「セカンドライフ」の注目度は高くなっています。夫婦でのんびり旅行を楽しむ人たちや新しい事業を始める人たち。ただ、さまざまな理由で夢を途中で諦める人たちも少なくありません。今回は、仕事一筋だった男性が、現実の壁にぶつかる無念なエピソードを紹介します
キッチンカー

※画像はイメージです

ずっと描いていた退職後の夢

 今回、定年後のエピソードを語ってくれたのは自動車部品メーカーに勤める吉村さん(仮名・55歳)です。海外委託製造が基本だった吉村さんの会社は、海外に多くの製造拠点を持ち、吉村さんは主にそれらの海外企業との折衝する部門に従事していたそうです。 「海外の下請け会社とのコンタクトをとるのが主な業務です。だから、まるで商社マンのように海外を飛び回っていました。ただ、最近の不景気に伴い待遇が悪化し、給料や手当も数年前に比べると3分の2ほどにまで落ちています。ここへ来て『このままでいいのだろうか?』という気持ちが湧いてきました」  そんな矢先、幸か不幸か早期退職制度の募集があったそうです。早期退職に対する上乗せ金額はおよそ900万円とのこと。定年まで勤め上げる場合と比較して、退職金の合計が少し上昇するらしく、吉村さんはこの制度に手を挙げたそうです。 「実は、定年退職したらキッチンカー事業を始めたいと思っていたんです。幸い現在の自宅は親から相続しているので、退職金の使途は他の同年代の人より恵まれていると思っています。上乗せ分と合わせて3000万円弱の金額が見込めそうです

想定外の初期費用に不安が募る

 そうと決まれば、会社帰りに書店へ寄ってキッチンカー開業に向けた書籍を漁る日々が始まった吉村さん。 「自治体への届け出から、キッチンカーの準備、そして最も大切なメニューの開発……。想像以上に準備が大変なことに今さら気づきました。でも、決断した道なので精一杯頑張ろうと思います」  退職の日が迫り、同僚や部下にひととおりあいさつを行った吉村さん。想像以上に事務的な感じで長年勤め上げた会社を去り、具体的な準備に取り掛かります。ところが――。 「海外のキッチンカーに憧れていたんですよ。キッチンカーとなるバンは、イタリアへ出張するたびに憧れていた『IVECO』というブランドです。このメーカーのメインはトラックなのですが、ヨーロッパではカラフルなこのバンがたくさん走っていて、これ一択でした。ただ、キッチンカーに改造すると1000万円は余裕で必要になることが判明し、とりあえず本体は中古の並行輸入モデルにする予定です。それでも600万円はかかりそうです」  吉村さんは、イタリア製のワゴンをカスタムしたおしゃれな外装に、食材も産地直送品を使うというこだわりのキッチンカーが理想でした。ただ、それ以外にも必要なアイテムは多数あり、徐々に不安を感じるようになっていきます。
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気になり出した妻の鋭い指摘
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愛犬ベルクちゃんと暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営
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