更新日:2024年11月24日 10:33
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セブン&アイ「9兆円MBO案に潜む“危険な賭け”」。非上場で外資による買収は回避できるけど

「セブンがカナダに乗っ取られる!?」。  そんな衝撃的な展開が、現実味を帯びてきている。セブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン&アイ)が創業家の伊藤家からMBO(経営陣による買収)の提案を受け、非上場化を検討しているとのニュースが飛び込んできた。この報道を受け、同社の株価は急騰。だが、この一連の動きには単なる経営戦略を超えた複雑な背景が潜んでいる。
セブン&アイ・ホールディングス

セブン&アイ・ホールディングス J_News_photo – stock.adobe.com

 カナダの大手コンビニ運営会社クシュタールが、セブン&アイに対して買収提案を行っているのだ。その提案額は、なんと7兆円規模に上る。通常、ここまでの買収額を提示できる企業は限られており、それだけクシュタールがセブン&アイを狙う本気度がうかがえる。  さらに、クシュタールは提案を拒否された場合、敵対的買収にも踏み切る可能性を示唆している。これを受け、セブン&アイ側が非上場化を含めた対抗策を模索しているというわけだ。

9兆円MBOの構図と課題

 現在報じられているMBO案では、総額9兆円が必要とされている。この巨額の資金をどう賄うのか。情報によれば、創業家である伊藤家や伊藤忠商事からの出資3兆円、そして三井住友フィナンシャルグループをはじめとするメガバンクからの融資6兆円という形で構成される見通しだ。  だが、このMBOが成立した場合、返済負担は大きな課題となる。6兆円規模の融資は、仮に金利が数%であったとしても年間数千億円単位の利払いが発生する計算だ。これにより、セブン&アイは事業拡大への投資資金を削がれる可能性が高い。特に、現在のようなインフレや金利上昇が続く経済状況では、融資返済の負担がさらに増大するリスクがある。  こうした状況を考えると、今回のMBO案は「危険な賭け」とも言える。この巨額の資金調達は、セブン&アイを守るための盾となるか、それとも経営を圧迫する重荷となるかは、今後の事業戦略次第だ。

外資への拒絶感?世論の反応

 日本国内では「外資による買収」に対して根強い拒絶感が存在する。「日本の優良企業が外国に渡るべきではない」という意見がネット上で見られるのもその一例だ。だが、この感情的な反応が、果たしてセブン&アイの将来にとって良い結果をもたらすのかは疑問だ。  実際、7兆円という買収額を提示する買い手は、滅多に現れるものではない。仮にクシュタールによる買収が実現した場合、セブン&アイがその経営力で買収側を逆に凌駕する可能性もある。むしろ、これはセブン&アイが国際市場で飛躍するチャンスとも捉えられる。  また、このMBOには伊藤忠商事が出資者として関与している点も注目に値する。伊藤忠商事は、すでにファミリーマートを完全子会社化している企業だ。もし今回のMBOが成立すれば、日本の3大コンビニチェーンのうち2社が伊藤忠陣営の傘下に入ることになる。  これにより、国内市場における競争環境への影響が懸念されている。特に独占禁止法に基づく規制当局の対応がどのようになるかは、不透明な部分が多い。さらに、三菱商事とローソンの連合も、こうした動きを黙って見過ごすことは考えにくい。日本のコンビニ業界は、このMBOを契機に新たな勢力図の形成を迫られることになりそうだ。
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セブン&アイの未来はどこへ向かう?
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金融ライター、個人投資家。資産運用とアーティスト作品の収集がライフワーク。どちらも長期投資を前提に、成長していく過程を眺めるのがモットー。 米国株投資がメインなので、主に米国経済や米国企業の最新情報のお届けを心掛けています。Webメディアを中心に米国株にまつわる記事の執筆多数 X(旧ツイッター):@usjp_economist

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