結局QE3見送りとなる「意外な顛末」
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このコラムをご覧の方は、「QE3」という言葉をご存知でしょうか。日本語なら、「量的緩和第三弾」と訳されるもので、要するに米国の中央銀行であるFRBの追加緩和です。
今年の金融市場では、それを「やる」「やらない」といった一種の論争が続いてきたのですが、最近はそれがついに9月までに「やる」との見方が強まってきたようです。
ただ今回は私が述べるのは、「9月QE3をやらなくなる理由」です。
◆キーワードは「大いなる不確実性」
8月1日、FOMCで追加緩和は見送られましたが、次回9月FOMCにかけて追加緩和の可能性は一段と高まったとの見方が基本のようです。
さらなる景気・雇用の悪化ではなく、景気・雇用の改善が見られなければ追加緩和に踏み切る可能性が高いとの見方が有力になったようです。
ただ、その9月FOMC前に発表される、8月3日と、そして9月初めの2回の雇用統計が「改善」し、9月追加緩和がやはり行われない可能性はないだろうかということを今回は説明したいと思います。少し長く、難しくなるかもしれませんが、お付き合い下さい。
ところで、それを説明する上で、昨年9月FOMCでツイストオペを決定したケースについて確認しましょう。
ツイストオペが行われる前、非農業部門雇用者数(NFP)は5-8月分と4か月連続で前月比1ケタの増加にとどまりました。しかも9月FOMC前に発表された8月NFPは前月比5万人の増加となり、増加幅が一段と縮小したのです。
さて、今年の場合も、4-6月と3か月連続でNFPは前月比1ケタの増加となりました。
3日に発表される7月のNFPも前月比増加幅が1ケタにとどまったら、4か月連続のNFP小幅増となり、ツイストオペ決定と同じような条件となるわけです。
ただ、昨年の場合、ツイストオペ決定後、NFPは前月比2ケタ増加へ回復しました。これは、ツイストオペの効果もあったでしょうが、そもそもツイストオペを決める前が雇用悪化のピークだった可能性があったのでしょう。
ツイストオペ決定の前月、昨年8月の金融市場は米国債格下げ騒動が吹き荒れていました。そんな「大いなる不確実性」を前に、8月の取引、企業活動は夏休みといった以上に手控えられ、冴えない結果となりました。
米国債格下げといった「不確実性」が一段落し、取引が再活発化し始めた後も、冴えなかった8月の景気指標発表を受け、9月の相場は冴えないものとなりました。
要するに、米国債格下げといった「大いなる不確実性」は、2か月相場の売り材料となったわけです。それが上述のように、昨年の雇用悪化のピークのタイミングに重なり、9月ツイストオペ決定の一因になったと考えられるわけです。
さて、今年6月中旬にかけてのギリシャ再選挙を巡る混乱は、昨年8月米国債格下げ騒動と同じような「大いなる不確実性」だったかもしれません。再選挙結果次第ではついにユーロ崩壊が現実味を帯びかねないといった中で、取引も企業活動も手控えられ、6月の相場は冴えない結果となり、その冴えない6月の指標が発表された7月の相場も冴えないものになりました。
ただ、昨年は8月の「大いなる不確実性」が一段落した後、9月以降の景気指標は、反動も後押しして改善に転じました。
さて、今年6月の「大いなる不確実性」が一段落したということなら、7月以降の景気指標は改善する可能性があるわけです。9月FOMC前に発表される7月と8月のNFPなど景気指標が改善したら、追加緩和は微妙になるかもしれないですが、果たして? (了)
【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。
著書に
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