なぜ飲食店は「ブラック」化するのか?
デフレの波に揉まれ、低賃金・過剰労働・サービス過多が蔓延る外食産業での従業員と客両者のド底辺っぷりについて紹介したが(https://nikkan-spa.jp/268217 )何がド底辺飲食店を生むのか!?ブラック企業アナリストの新田龍氏に聞いた
◆飲食店をド底辺化させた悲劇の社会構造とは?
ド底辺飲食の実態に詳しい新田龍氏は、「飲食業には日本の構造的な問題が集約されている」とし、会社、社員、労働基準法の観点からこう分析する。
「まず、会社側の問題としては、とにかく今は安くて長時間営業している店が当たり前となってしまった。そのため、バイトを減らすなど、安易に人件費削減に手をつけてしまい、非人間的なサービス残業を強いられる状況になってしまっています。ダメになったら使い捨て。従業員は部品ですらなく、燃料扱いをされてしまっているんですね」
なかには、留学生を日本語を学びながら働く名目で“研修生”とし、安い時給でこき使っている飲食店もあるのだとか。
また、激安店だけではなく、流行のコンセプト飲食店も問題をはらんでいる。
「コンセプト系の飲食店では新しいものに飛びつく客の好奇心を満たすため、サービスが過激化していく傾向があります。最初は単なるコスプレだったのが水着に、そしてお触り可に、と。女子高生を水着で接客させたとして、『ももじろうグループ』の経営者らが逮捕された事例ありました」
それだけ聞くと、従業員たちは被害者のようにも思えるが……。
「一方で、社員にも問題があります。飲食では、大量採用が当たり前で、学生時代に努力をしていなかった社員がたくさん採用されるため、一部の店舗は吹きだまり状態。就職難で、高学歴社員も入社するようになりましたが、ド底辺社員のレベルや業務内容に絶望し、すぐに辞めてしまうんです」
また、労働基準法の存在も、悲劇を生む要因の一つなのだという。
「長時間労働なくしては成り立たない業界なのに8時間で設定されると、残業代がかさみ、結果、サービス残業を求めることになります。だから、8時間縛りを廃止し、長時間働くことに同意した従業員に、ちゃんとした対価を支払うようにしたほうが、労働環境はかえってよくなるはず。労基法は違反をしても、自殺などのニュースにならない限りは大きなペナルティにならないことも問題でしょう」
法改正をしなければ変わらないところまできていた日本の飲食業界に未来はないのだろうか……。
【新田 龍氏】
奈良県生まれ。『人生を無駄にしない会社の選び方』(日本実業出版社)など著書を多数出版するかたわら、全国で講演活動を行う
取材・文/宮崎智之(プレスラボ)
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