ユーロ危機で崩壊する欧州。ドイツの一人勝ちはいつまで続く?
9月13日、FRBは「QE3」の実施を決めた。続いて日銀も金融緩和を実施すると発表。これで日米欧が揃って金融緩和を強化することが決まったが、ユーロ危機はダラダラとこれからも続くことが予想されるという
⇒【前編】はこちら https://nikkan-spa.jp/304888
◆ユーロ危機で崩壊する欧州。スペインやギリシャの若者の半分に職がない【後編】
(人気ブログ「金融日記」管理人 藤沢数希氏)
奇妙なことに、ギリシャやスペインに返ってくる当てのないカネを貸さねばならず、ユーロという欠陥通貨の犠牲者であるはずのドイツは、実はユーロの欠陥から最大限の恩恵を受けている。本来は輸出競争力がありドイツは通貨高になるはずだが、ユーロ圏ではギリシャやスペインなどの問題国家を抱えているのでユーロは安くなり、強いドイツの輸出企業はますます強くなっている。ドイツの失業率は極めて低い水準を維持している。
もっと奇妙な話は、ギリシャやスペインの国民も、ユーロに残るのを強く希望していることだ。ユーロの借金を踏み倒して自国通貨に戻せば、通貨が大暴落する。そうなると、例えばスペインの売春婦はドイツ人から見ればものすごく安くなるので、たくさん観光客が来たりして経済が持ち直していく。安い人件費を利用して、工場の誘致も可能なはずだ。しかし、そういう身の丈に合った生活を、ギリシャ人もスペイン人も望んでいないようなのだ。
最後に楽観的なことも少し述べておこう。アテネやマドリードなどの都市では、昼間から売春婦が溢れているそうだが、こういった売春婦は政府の雇用統計からは漏れているので、ギリシャやスペインの若年層失業率は、幸いなことにもうちょっとマシかもしれないということだ。
【今週の数字】
スペインの若年層失業率
53%
終わりなきユーロ危機で、南欧諸国の経済は破壊されつつある。スペインの若年層失業率は53%、ギリシャは54%。マドリードやアテネの町では売春婦が昼間から溢れているという
【藤沢数希氏】
欧米の研究機関にて計算科学、理論物理学の分野で博士号を取得。その後、外資系投資銀行に転身。主宰するブログ「金融日記」は月間100万PV、ツイッターのフォロワーは6万人に及ぶ。最新刊『「反原発」の不都合な真実』(新潮新書)が発売中
― ユーロ危機で崩壊する欧州【2】 ―物理学研究者、投資銀行クオンツ・トレーダー職等を経て、作家・投資家。香港在住。著書に『外資系金融の終わり』『僕は愛を証明しようと思う』『コスパで考える学歴攻略法』などがある
『外資系金融の終わり』 外資系金融の終わりのはじまり |
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ