電力の約8割を原子力発電で賄う「原発大国」のフランスでは……
海外在住ジャーナリストは見た! パリ編
福島原発の事故に際し、事態を重く見たフランス政府は、チャーター機で自国民を一時帰国させるなど、対応が迅速だった。日本国内に残る選択をしたフランス人たちには、大使館から「放射能汚染の危険があるため、福島から500km以上離れるように」と指示が出た。そのため、3月12日の夜中には、関西方面へ向かうフランス人が続出。また、大使館では、ヨウ素剤も無料で配布された。
フランス国内では、水素爆発した瞬間の映像がテレビでくり返し流されたため、「チェルノブイリ以来の大惨事が起こった」という認識が強まった。
4月1日付の『ル・モンド』では、「やっと批判的になり始めた日本のメディア」として、「事故の状況に関して十分な報道をしていなかった大手メディアは、やっと政府と東電の対応に批判的になり始めた」と報じた。「全国紙には、東京電力をはじめとした広告主企業の圧力がある。そのため、攻撃的な論調を避け、週刊誌によって暴かれた不祥事を過小評価し、遅れて報道するのが常」とする。
「しかし、そんな大新聞も、政府から発表される情報に不満を感じる世論に応え始めた。公共放送であるNHKは、原子力ロビーの圧力もあり、情報伝達の使命と、人々の不安を恐れる政府との間で板挟みに」と。
日本は世界から「真実を隠蔽する国」という評価を受け始めている。世界で一番安全な国、であるという誇りを失っていいのだろうか。
『ル・モンド』の記事を集めた月刊誌『Mensuel』では、福島原発の状況と東京電力に関する特集記事を掲載し、東電の隠蔽体質を指摘。「東京電力は世界レベルで優良企業だが、特に原子力に関する情報を隠す傾向があるのも事実」
3月14日付の『フィガロ』紙では「チェルノブイリ級の事故との声も聞かれるなか、次の地震が東京近郊で起こるであろうといわれている」と報じ、同日付の『リベラシオン』紙では「日本は核の脅威にさらされている」と報じた
取材・文/島田健弘 朝井麻由美 水越理恵子 奈良岡崇子(本誌) 写真/産経新聞社
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