犯罪組織「半グレ」の報道されない実態
海老蔵事件や六本木襲撃事件以降、「関東連合OB」や「半グレ」という新しい犯罪キーワードがマスコミで使われるようになった。しかし、その定義は曖昧で、組織実態がどうなっているのか、ほとんど解明されていないのが現実だ。上層部から末端まで、組織構成はどうなっているのか?
警察庁によれば、今年10月の振り込め詐欺被害額は4年ぶりに増加傾向に転じ、全国で20億円を超えた。こうした詐偽犯罪を始め、9月に起きた六本木襲撃事件の背後関係などでたびたび報道されるようになったのが「半グレ」と呼ばれる人々の存在だ。
暴力団のように看板を掲げないが、犯罪を主な生業とする集団。東京であれば暴走族「関東連合」や「怒羅権」のOBが中心メンバーだと報じられる。想像するのは、見るからに不良じみた若者の姿だろう。だが、その実態は違う。
未公開株詐欺グループの番頭格であるF(22歳)は語る。
「関東連合OBがS(詐欺)の本丸とか言いますが、OBで今、現役でSの現場にいる人って数える人しかいないはず。今、振り込め詐欺は第三世代です。元々、10年前に振り込め詐欺が始まったとき、五菱会(闇金組織)のKグループ(最大統括組織)にいた人たちが現場にゴロゴロしていました。もちろん関東連合の人もいた。それが稼ぎまくって成り上がり、何人かは自分がオーナーになってSの“店舗”に投資するようになった。これが第二世代。その現場で働いてたヤツが真似して作った亜流グループが第三世代。初期からやってる人たちはちょっとした資産家ですから、S以外にも色々なビジネスに投資してますよ。IT系、不動産、情報商材、金融……。やっぱりKグループから続くオーナーたちが資金力ダントツです。でも、今の現場にいる人間は、人種も経歴もバラバラ」
本誌11/27発売号『話題の「半グレ」その組織全容に迫る』では、報道で一躍注目を浴びる新種の犯罪組織「半グレ」の報道されない実態について肉迫。複雑化する犯罪組織とそこに追いつかない摘発の現状についてリポートしている。 <取材・文/鈴木大介 李策>
では現場を押さえるのは、どのような人物かというと、彼らのような「番頭」。その下に1店舗3~10人ほどのプレイヤーと、ドサ(出し子・取り子)がいる。プレイヤーやドサは基本的に成功報酬制で、被害者から騙し取った額の10%程度を取るが、摘発の最前線で矢面に立つのはドサ。ドサと接点があるのは番頭のみで、オーナー格の人間に摘発のリスクが及ぶことはまずない。こうして分断されながらもカネを通じてひとつのヒエラルキー、企業体が出来上がっているのだ。
さらに彼らの証言を聞くと、番頭やそこにのし上がれるプレイヤー格には大卒などが増えており、また、末端の「ドサ」で、なおかつ対面で引き出す必要がないATM担当の「出し子」などにいたっては、「知的障害者や難病を抱え通常の就労ができない人間、最近では原発作業員で限界まで被爆してもう働けなくなった人もいる」(別の組織の番頭格)という。
「社会から排除された人々」が「仕事としてやっている」のが現状なのだ……。
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